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白斑研究事始め[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.24

片山一朗 (大阪市立大学大学院医学研究科色素異常症治療開発共同研究部門特任教授)

登録日: 2019-01-02

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最近の臨床や基礎の学会、研究会に参加して感じることは、皮膚科あるいは専門分野である基礎研究で本来、常識として知っておくべきことや、たかだか20~30年前のことを知らない、あるいは勉強していない方が増えていることです。また、自分自身どのような疾患を治したいのか、その疾患のどのような病因論の解明に興味があるのかなどが伝わってくる発表が少なくなっていると感じているのは私だけではないと思います。これらの理由は複雑ですが、結論としてはある時期から個々の皮膚科教室の伝統、歴史が継承されなくなったことが最も大きいのでは、と考えています。

数年前から、入手が困難な昔の皮膚科領域の原著論文を訳し、“Dermatology classics”として若い先生に読んで頂こうというプロジェクトを始め、昨年、私の退官に合わせ自費出版(今後販売予定)しました。その過程で、プロジェクトの中心となる西岡清東京医科歯科大学名誉教授と入手が困難な教本を求めてOxford大学やRoyal College of Surgeons, St Bartholomew’s, Hospital, Royal College of Physiciansなどの図書館を訪問し、旧い貴重な資料を目にする機会を得ました。そして、150~300年前の原著や教本を読ませて頂き、当時の先生がいかによく皮疹を観察し、その成因、病態を考えておられたか再認識しましたし、現代に生きるイギリスの皮膚科の先生方と話をすると、そのような旧い時代の古典皮膚科学とでも言うべき疾患や、その時代の背景が当たり前のように出てくることにも驚き、長い歴史に裏打ちされた皮膚科医と同じ土俵で戦うことの難しさも感じました。

皮膚科の臨床でもその膨大な歴史をもう一度よく見直して、何が解決されていないか、どのような治療が応用可能か考え、そこからまた新しい病態研究や治療の開発を始めていきたいと考えます。私も、今年から美白化粧品による白斑の病態研究を中心に、新たに色素細胞の基礎研究を若い方々と始めました。その契機になったのは、150年以上前の図説教本に白斑の精密な図譜を見つけ、美白化粧品発症の機序に迫る記載を見つけたことでした。

これからもう少し研究生活を楽しみたいと思います。

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