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奈良県発最新ニュース[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.21

広岡孝雄 (奈良県医師会会長)

登録日: 2019-01-02

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奈良県では地域別診療報酬について、熱い論議がなされているのはご存知でしょうか。初めて聞く方のために少し説明します。

昨年4月から国民健康保険が都道府県単位化されました。奈良県では県民負担の抑制に向けた取り組みを開始し、「見える化」を進めています。それが第3期医療費適正化計画で、4年後の2023年の医療費目標を4813億円(年平均0.61%)と決めました。そして、奈良県知事が昨年3月28日にこの内容を発表したのですが、国の推計ツールだと、高齢化率や医療の高度化を勘案し5245億円と試算しています。この決めた医療費目標を達成できない場合は、高齢者の医療の確保に関する法律(高確法)第14条に基づき、今は1点10円換算ですが、9円や9円50銭にするように、国に求める意見を提出する、としています。奈良県の1人あたりの医療費は、全国的に見て決して多い県ではありません。もし4年後に医療費が抑えられないときは、「伝家の宝刀を抜くぞ」(知事説明)と述べています。

ジェネリック医薬品の使用促進、ポリファーマシーの予防、県民の健康管理をしっかりとすることで対応できるとしていますが、昨年の診療報酬が0.55%上昇しましたが、この地域別診療報酬の率を見ると桁違いで悪くなります。もし実現した場合、奈良県の医療はどうなるのでしょうか。新しい器械や医療器具を入れ、最新の医療をめざしても、収入が少なくなれば増改築や従業員の確保が困難となります。優秀な人材は県外の医療機関に転職し、民間病院では古い器具を使い続けなければならなくなります。県民はそれを我慢するのでしょうか。さらに進むと病院や診療所の閉鎖が始まり、薬局では逆ザヤになり経営が成り立たなくなり、奈良県の医療が荒廃してしまうのではないか、と危惧されます。これが前例となり全国へ波及するかもしれません。

このような状態になることだけは阻止してゆく覚悟をしています。日本医師会や近畿医師会連合などとの連携を深め、国会議員や県会議員にも働きかけを強めています。全国医師会の先生方や、医療関係者の皆様の更なるご理解とご支援をお願いします。

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