No.4925 (2018年09月15日発行) P.42
上月正博 (東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野教授/東北大学病院リハビリテーション部部長)
登録日: 2018-09-18
最終更新日: 2018-09-12
慢性腎臓病(CKD)患者ではサルコペニア・フレイルの割合が高く,病状の進行,日常生活活動の低下,死亡率の増加にもつながっている
腎臓リハビリテーションは,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラムである
CKD患者の運動療法は,サルコペニア・フレイルの予防・改善,生命予後改善,透析導入予防など,大きな役割が期待されている
2016(平成28)年度診療報酬改定では,進行した糖尿病性腎症の患者に対する質の高い運動指導を評価するために,新たに高度腎機能障害患者指導加算が設定された
わが国の成人における慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)患者数は約1330万人もいると推計される。腎機能の低下が進むと生命を維持するためには透析が必須となる。2016年末の透析人口全体32万9609人の平均年齢は68.15歳,2016年新規導入透析患者3万7250人の平均年齢は69.4歳で,年々増加している1)。一般住民と同様,CKD患者でも運動不足が死亡率上昇に影響を及ぼすことが明らかとなり2),CKDの治療は「運動制限から運動療法へ」のコペルニクス的転回を果たした。本特集では,腎臓リハビリテーションの中核のひとつである運動療法の効果と実際に関して述べる。
CKD患者におけるフレイルは,透析,入院,死亡のそれぞれ独立した危険因子である3)。保存期CKD患者では,CKDの進行に伴い心血管疾患の発症率は加速度的に高まり,末期腎不全に至るよりも心血管系の合併症で死亡する患者が多い(図1)4)。運動耐容能の低い透析患者や運動習慣のない透析患者の生命予後は悪く,これらの患者にとって運動不足は,低栄養や左室肥大と同程度の生命予後短縮の要因となっている。CKD患者では,安静こそが治療と考えられてきたが,最近その生命予後は身体機能に関係し,歩行速度が遅く,6分間歩行距離が短く,握力の小さい患者などでは死亡率が高いと報告されている5)。