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循環器疾患 治療過程で遭遇する諸問題の解決法

症例から学ぶ問題事例の解決法!

定価:7,040円
(本体6,400円+税)

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編集: 代田浩之(順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 教授)
判型: B5判
頁数: 424頁
装丁: 2色刷
発行日: 2014年12月25日
ISBN: 978-4-7849-4288-6
版数: 第1版
付録: -
☆ 多種多様な検査を組み合わせて行われる循環器疾患の診断プロセス。急性か慢性か,年齢,全身状態,重症度,合併の有無などによって,同じ疾患群でも診断過程は必ずしも同じとは限らず,それは治療方針の決定でも同様です。
€
☆ 本書は循環器疾患の治療に際し,知識としては知っているものの対処が難しい状況や,イレギュラーな事態に焦点を当て,ガイドラインやマニュアルからはこぼれ落ちるが実地臨床上重要な「諸問題」の解決法について解説。臨床経験の豊富な先生方に症例から学んだ教訓を開陳して頂き,専門医でも納得できるレベルの事例を集積しました。
診療科: 内科 循環器内科

目次

I. IHD
1)LMT病変の非心臓手術 ─前立腺癌手術直後に発症したLMTが責任病変のACS
2)難治性スパスムに合併する心室細動 ─ICDの適応は?
3)診断に苦慮した左室仮性瘤遅発性oozing ruptureの症例
4)心室中隔穿孔合併の急性心筋梗塞で血行動態が安定していたために,待機的手術を選択した症例
5)亜急性ステント血栓症を繰り返す症例
6)抗血小板薬を使用する際,注意すべき症例 ─本態性血小板減少症患者へのPCI施行
7)急性心筋梗塞に対するPCIのため造影剤腎症を起こした症例
8)末梢動脈疾患を合併する無症候性心筋虚血 ─心臓核医学検査および冠動脈造影では冠動脈バイパス手術適応と診断できなかった症例
II. PCI
1)ワルファリン休薬中のヘパリン投与が原因と考えられるヘパリン起因性血小板減少症の症例
2)PCI施行後の繰り返すステント内再狭窄で判明した金属アレルギーの症例
Tips IVUS抜去困難例の対応─抜去困難を引き起こさないために
III. 心不全
1)補助人工心臓適応に悩む症例 ─心室性不整脈を合併する重症心不全modifier A
2)強皮症に合併する肺高血圧症の鑑別 ─肺動脈性と強皮症心に合併する左心不全によるPH
IV. 不整脈
1)Brugada症候群における遺伝子診断の取り扱いについて
2)PCI後で超高齢者の心房細動治療 ─DAPT/TAPTをどう考えるか
3)薬剤誘発性心室頻拍 ─アミオダロンの点滴注射によりストームに移行した拡張型心筋症の症例
4)ペースメーカ植込み後に感染症状を認め,デバイス感染の診断・抜去を行ったのち,再度植込みを行った症例
5)植込みデバイス周囲の感染が明らかとなったが,末期心不全CRT-D植込み症例のため,デバイスの抜去が難しく保存的に治療した症例
6)脳外術後のQT延長
7)低体温療法中にVFストームへ至ったQT延長症候群2型の症例
8)アミオダロンが原因と考えられる末梢神経障害をきたした症例
9)Slow VTに対するICD設定─拡張相肥大型心筋症の症例から考える
10)原因の特定できない失神発作の診断に,植込み型心電図モニター(ILR)が
有効であった症例
V. 弁膜症
1)妊娠中期に広範囲急性肺血栓塞栓症を発症した症例
2)感染性心内膜炎に脳出血を合併したため手術の時期の判断が困難だった症例
3)中等度僧帽弁逆流にもかかわらず症状が強い症例の鑑別診断と治療方針
4)健康診断で心雑音を指摘された症状のない重症三尖弁閉鎖不全症の症例 ─内科的治療から外科手術適応のタイミング
5)短期間に急速に増大した大動脈炎症候群による総頸動脈瘤の治療
6)大動脈弁置換術後に再手術となった大動脈炎症候群の症例
7)肺高血圧を併発した大動脈弁狭窄症に対し,トルバプタンによりTAVIへの橋渡しを行った症例2
8)低左心機能を伴う大動脈弁狭窄症の症例
VI. 大動脈疾患
1)偽腔閉塞型大動脈解離の手術療法を検討する時期とは
2)左冠動脈主幹部の解離を合併したStanford A型偽腔閉塞型急性大動脈解離に
対してステント植込みと保存的加療により救命した症例
3)超高齢者に対する大動脈弁置換術の適応と術後管理から日常生活支援まで
4)左鎖骨下動脈分岐部近傍にエントリーを有する慢性期Stanford B型大動脈解離の手術症例
5)肺高血圧症に対するエポプロステノールの導入
6)外来通院中の大動脈炎症候群に心筋炎によるうっ血性心不全を合併した症例
7)治療抵抗性の大動脈炎症候群に対するアプローチ ─IL-6受容体抗体の大量投与
VII. 心筋症
1)PTSMA施行後5年で発症した心室頻拍の症例
2)心電図上,左室肥大を呈した心アミロイドーシスの症例
3)女性の心Fabry病
4)ミトコンドリア脳筋症
5)睡眠時無呼吸の治療により左心機能が著明に改善した肥満症例
6)僧帽弁閉鎖不全症を合併した特発性拡張型心筋症で僧帽弁治療が奏効した症例
7)確定診断がつかないが心臓サルコイドーシスが疑われる症例のステロイド治療
8)周産期チーム医療と,IABP・S-Gカテーテル下の集中管理が奏効し妊娠出産した拡張型心筋症
9)右心不全を合併した拡張型心筋症の症例
VIII. 心膜炎
1)心外膜切開にて改善した難治性滲出型収縮性心外膜炎の症例
2)VAD導入後に巨細胞性心筋炎と診断された急性心筋炎の症例
IX. 先天性心疾患
1)悪液質状態の高齢者心房中隔欠損症症例に対する手術適応
2)成人のファロー四徴の手術適応─20歳でTOFの修復手術,50歳で心不全を発症し再手術を施行した症例
3)先天性心疾患の術後遠隔期に発生した上室性不整脈
X. 高血圧症
1)高齢者の動脈硬化性腎血管性高血圧に対して経皮的腎動脈形成術を施行したが,血圧コントロールに難渋した症例
2)心血管合併症を有する特発性アルドステロン症 ─正しい診断プロセスと合併症のリスクマネジメント
3)大動脈解離を発症した治療抵抗性高血圧症例
4)両側腎動脈狭窄症による腎血管性高血圧に対する治療
5)悪性腫瘍に伴う肺高血圧症

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序文


全国の医療機関で毎日多くの症例が外来や病棟,あるいは検査室や手術室で循環器疾患の診断と治療を受けている。平成23年の厚生労働省の患者調査によれば,わが国の循環器疾患は1日約800万例が外来に通院し,65万例が入院して治療を受けている。

循環器疾患の診断プロセスは病歴聴取から始まり,身体所見,血液・尿検査,胸部XP,心電図,心エコー,そしてCTやMRIなどの非侵襲的画像診断に加えて,心臓カテーテル検査・冠動脈造影や電気生理学的検査,心筋生検などを組み合わせて行われるが,急性疾患か慢性疾患か,年齢や全身状態,疾患の重症度,他疾患の合併はあるかなどによって,同じ疾患群であっても診断過程は必ずしも同じとは限らない。教科書にはこれらの診断,治療過程が整然と記載してあるが,実際の症例は情報もそれぞれ異なり,しばしば診断に迷う場合も存在する。それは治療方針の決定でも同様である。循環器領域では救急症例が多く,慢性疾患に対する治療とは異なった治療戦略が必要である。また,内科治療と外科治療に加えてカテーテル治療やデバイス治療が大きな位置を占めることが特徴であるが,どれを選択するのか,どのように組み合わせるのかは症例の背景や病型によって大きく異なる。特に最近では高齢者の増加に伴い医学的判断に加えて社会的な判断もより重要で,受け持ち医の間でもしばしば治療方針の意見が分かれる。日常臨床で繰り返されるこのような診断と治療の中で,議論すべき症例のdecision makingには過去の類似症例がしばしば参考になるし,また類似症例は各施設で必ず経験されている。

この書籍は,実際に経験された症例を基に,日常に経験する典型例からは少し外れた症例を紹介することによって,目の前の少し迷う症例の方針決定の一助になればと企画されたものである。臨床経験の豊富な先生方に集まっていただいて,“時に経験するちょっと迷う症例”を紹介してもらった。参考になれば幸いである。

€平成26年11月15日

€順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 教授

€代田浩之

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レビュー

【書評】循環器診療の臨床力を高め、問題点の整理・解決に役立つ一冊

山科 章(東京医科大学循環器内科主任教授)
日常診療では判断に迷うことは多い。いろいろな状況に対応できる柔軟な考え方、幅広い知識、対応力が必要とされる。本書は、そういった臨床力を高める企画の書である。
経験豊富な臨床医が実際に経験した中で、迷った症例、苦労した症例を提示し、それらの解決に向けての考え方を示している。虚血性心疾患、心不全、不整脈など56例で、いずれも悩ましい症例である。筆者自身も自分ならばどう対応するだろうかと、臨場感をもって拝読した。なにより、解説が巧みである。
最終段階までを3ないし4シーンにわけて、各段階で、まず「問題点は何か」で症例の要点を整理し、診断基準やガイドラインについて解説しながら、症例の特徴・状況をまとめたうえで解決に向けての考えを展開してゆく。いくつかの問題点を整理したところで、「今だから言える忘れてはいけないポイント」で重要なポイント、コツ、ピットフォールを紹介する。それを繰り返しつつ結論へと導く。
そこで感じるのは、複雑な症例ほど基本に戻り、問題点を整理し、1つずつ解決してゆかなければダメだということである。確かに悩ましい症例、複雑な症例・病態を題材にしてはいるが、そういう症例であればこそ基本が大切であるというメッセージが伝わってくる。また症例数も多く、臨床で遭遇する循環器疾患のほとんどの疾患・病態を経験できると言っても過言ではない。
長く医者をしていると、特殊な症例に出会うと、「あの症例に似ている」と思うことがしばしばあり、それが解決の糸口になることも稀ではない。経験の少ない読者でも、本書の症例を自分で受け持った気持ちでじっくり読み込めば、あたかも実際の症例に匹敵する経験になり、日常診療にきっと役立つと思う。
エビデンスの時代にあっても経験は重要である。循環器診療の基本的な考え方を身につけたい、経験を重ねたいと思っている方々に是非ともお勧めしたい一冊である。

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正誤情報

下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。

p4 図1『非心臓手術における心臓リスク管理のアルゴリズム』の右下
「手術の種類による心血管合併症のリスク分類」
【誤】
高リスク手術  :大動脈 もしくは他の大血管手術
 血管手術    末梢血管手術
中等度リスク手術:腹腔内・胸腔内手術,頸動脈内膜剝離術
         頭頸部手術,整形外科手術,前立腺手術
高リスク手術  :内視鏡手術,体表面手術,白内障手術
         乳房手術,外来手術
 ↓
【正】
高リスク手術  :大動脈 もしくは他の大血管手術
 血管手術    末梢血管手術
中等度リスク手術:腹腔内・胸腔内手術,頸動脈内膜剝離術
         頭頸部手術,整形外科手術,前立腺手術
高リスク手術  :体表面手術,白内障手術,乳房手術
         外来手術
低リスク手術  :内視鏡手術


p6 表2『Cardiac Risk Index System(CRIS)』
【誤】
(一般状態および検査所見)BUN50mg/dL
 ↓
【正】
(一般状態および検査所見)BUN50mg/dL

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