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転倒予防医学百科

高齢者・子どもの転倒をどのように予防するか!

定価:5,720円
(本体5,200円+税)

在庫切れです

編著: 武藤芳照(東京大学大学院教授)
判型: B5判
頁数: 354頁
装丁: 単色
発行日: 2008年08月01日
ISBN: 978-4-7849-6173-3
版数: 第1版
付録: -

地域在住高齢者、病院内の疾病・障害のある高齢者、介護・福祉施設に入所する虚弱高齢者,認知症高齢者等、そして、未来を支え動かすはずの子どもの転倒予防を本書では取り扱います。各場面での転倒の実態とリスク要因、予防的介入の方法、効果と限界を率直に提示し合い、知識と技術と理論を共有するために,本書は構成されています。保健・医療・福祉・教育,スポーツ等、様々な分野・領域の数多くの人々の実践に役立ちます

目次

理論編
1. 医療経済からみた高齢者の転倒・骨折予防の社会的意義
2. 疫学からみた高齢者の転倒・骨折
3. 「運動器の10年」世界運動からみた高齢者の転倒・骨折予防
4. 高齢者の転倒と骨折のメカニズム―転倒に伴う骨折と骨折に伴う転倒―
5. 高齢者の転倒に伴う骨折の診断・治療のポイント
6. 転倒後の高齢者に対するリハビリテーション骨折後の機能予後および生命予後
7. 高齢者の転倒のバイオメカニクス─工学の立場から─
8. 高齢者の転倒骨折のバイオメカニクス;乳幼児モデルからみた転倒動作の再現―次世代ヒッププロテクターの開発経過―
コラム:高齢者の転倒・骨折予防の基本戦略
9. 高齢者骨折と転倒予防―骨代謝からみた高齢者の転倒・骨折予防の基礎―
10. 高齢者の転倒に伴う大腿骨頸部骨折発生と受傷前ADL機能との関係
コラム:転倒経験からみた予防のポイント
11. 骨粗鬆症患者の転倒発生の身体的要因
12. 閉経後女性・高齢男性の転倒・骨折の危険予測
13. 高齢者の転倒と薬剤との関係
コラム:著名人の転倒事例から学ぶ(1)
14. 高齢者の転倒に伴う骨折予防のためのヒッププロテクターの効果と限界
15. 脳から見た高齢者の転倒の病態
16. 脳卒中患者の転倒と骨折
17. パーキンソン病の転倒と骨折
18. 高齢者の転倒と咬合の関係
19. 高齢者の転倒・骨折とビタミンDとの関係
20. 高齢者の転倒後症候群のメカニズム
21. 高齢者の股関節周囲骨折の生命予後
22. 総合病院における高齢者の転倒の実態と発生要因
23. 医療安全の立場からみた病院内での高齢者の転倒予防
24. 回復期リハ病棟における高齢者の転倒の実態と発生要因
25. 老健施設の転倒・骨折の実態と予防─6年間,1,407件の転倒の検討─
26. 介護施設での高齢者の転倒・骨折の生命予後と介入との関係
27. 泌尿器の立場からみた高齢者の転倒予防
28. 認知症高齢者の転倒の発生要因と予防への対応
29. 高齢者の転倒予防の新視点─手段的訓練と目的行為─
30. 日常生活における転倒事故
31. 転倒事故判例から見た転倒の原因と対策
コラム:著名人の転倒事例から学ぶ(2)
32. 子どもの転倒・骨折の実態と発生要因
33. 子どもの転倒予防の社会的意義

実践編
1. 病院内での「転倒予防教室」─東京厚生年金病院10年の実践と経験─
2. 介護予防事業としての転倒予防
3. 転倒・介護予防への健脚度測定の応用
4. 転倒予防自己効力感の概念と応用
5. 高齢者の転倒・骨折予防のためのQOL評価
6. 転倒ハイリスク者の早期発見のための「転倒スコア」
7. 転倒予防指導者に必要な高齢者の精神・認知機能の知識
8. 高齢者の転倒・骨折予防のための栄養管理・指導─医師の立場から─
9. 高齢者の転倒・骨折予防のための栄養管理・指導─管理栄養士の立場から─
10. 高齢者の転倒予防と住環境の整備
11. 高齢者の転倒予防のための杖の選択と使用法の指導
12. 地域での転倒予防事業の取り組み─札幌市の多機関連携による取り組み─
13. 岩手県「カシオペア転倒予防研究会」転倒予防教室を立ち上げてみて
14. 群馬県高崎市の「転倒骨折予防教室」
15. 湯布院厚生年金病院の転倒予防チーム
16. ブルーシー・アンド・グリーンランド財団の転倒予防事業
17. 転倒予防のための運動プログラム─運動あそび─
18. 転倒予防のための運動プログラム─楽しいリズム運動─
19. 転倒時傷害予防のための受け身運動プログラム
20. エクササイズボールを用いた運動プログラム
21. 高齢者のバランス障害と運動療法─Comprehensive one minute exercise (COME)─
22. セラバンドを用いた運動プログラム
23. 姿勢を安定化させる手法・機器とその原理
24. 転倒予防に向けた公園の設計
コラム:私のリスク因子

資料編
1. 転倒予防医学研究会「転倒予防大賞」の概要
2. 転倒予防医学研究会「転倒予防指導者養成講座」
3. 転倒予防医学研究会「転倒予防電話相談119」
4. 転倒予防医学研究会「推奨品」の概要
5. 歴史・美術からみた転倒

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序文


(後)期高齢者(長寿)医療制度が、この春より試行され、全国の75歳以上の高齢者およびその家族には、不安と怒りが湧き上がっている。仮に手続きと内容に問題がないとしても、結果として、一人ひとりの高齢者の心に不快で否定的な思いを生み出した人間的な温かさを欠いた取り組みであったことが、最大の問題であろう。一方、少子高齢社会の現在の日本で、高齢者の健康増進・介護予防への取り組みが、きわめて重要かつ差し迫った課題であることが、改めて浮き彫りにされた。そして、その介護予防の中心的課題の一つが転倒予防であり、その推進は今や時代の強い要請となっている。
(論)理が構築されれば、具体的な実践方法は自然に生み出されてくるものである。筆者らの研究グループが、厚生省(現厚生労働省)科学研究費による研究(杉岡洋一班長)の一環で行った調査の結果から、次の基本的論理を見出した。「転倒は、人類が長い進化の過程で獲得してきた直立二足歩行が円滑にできなくなるほど、身体機能が衰弱した結果を象徴している(転倒は結果)」というものである。そして、それを根拠に予防の具体的実践として、平成9(1997)年、東京厚生年金病院(東京都新宿区)に日本初の「転倒予防教室」を創設して10年の歳月が流れた。その間に生み出されたものが、本書の基盤となった『転倒予防教室 ─ 転倒予防への医学的対応 ─』(日本医事新報社、初版1999年、第2版2002年)と転倒予防医学研究会(2004年発足)である。
(場)面場面を想定して、一つひとつの転倒予防を考えることが重要である。地域在住高齢者、病院内の疾病・障害のある高齢者、介護・福祉施設に入所する虚弱高齢者、認知症のある高齢者等。そして、未来を支え動かすはずの子どもの転倒予防。各場面での転倒の実態とリスク要因、予防的介入の方法、効果と限界を率直に提示し合い、知識と技術と経験を共有するために本書は構成され、「百科」(もろもろの科目、あらゆる学科『広辞苑』第6版、2008年1月)と冠した。
(七)つの標語をまとめた「転倒予防七カ条」は、これまでの論理と実践と教育の積み重ねを集約したものである。
建物・構造(ハード)面での転倒予防の教育・啓発を促すための「ぬ・か・づけ
れているところ、いだん、段差、片づけてないところは、転びやすいので要注意)
という標語も、転倒予防医学研究会のメンバーの提案によるものである。言葉は力であり、一人ひとりの高齢者の頭に刻みこまれるような一つひとつの言葉が、日常の転倒予防のふるまいに結びつけられると信じている。
(い)かに努力・苦心しても、現状の仕組みでは防ぐことができない転倒もあることを強調したい。そうしなければ、転倒予防の取り組みとして、本来の保健・医療・福祉のあり方から逸脱した非人間的・非科学的な方法での対策が実践されたり、いたずらに専門職員らを萎縮させ、結果として高齢者、家族そして社会を不幸な事態に招くことになろう。つまり、転倒には「介入により防ぐことのできる転倒」と「現状の仕組みでは防ぐことのできない転倒」の二類があるという冷静かつ建設的なとらえ方が必要である。
本書は、先に述べた転倒予防に関わる時の流れから生まれた知見と、全国各地の実践の経験、すなわち転倒予防に関わる時間と空間とそれに仲間という「三つの間」の融合により編集された、その形が成立したところから、さらに新たな知恵と力を創造したいという希望もこめられている。
本書が、保健・医療・福祉・教育・スポーツ等様々な分野・領域の数多くの人々の日常の実践に、そして一人ひとりの高齢者の健康と幸福と自己実現に結びつくことに役立てば幸いである。

〈転倒予防7か条〉
1 ─ 歳々年々人同じからず
2 ─ 転倒は結果である
3 ─ 片足立ちを意識する
4 ─ 転ばぬ先の杖
5 ─ 無理なく楽しく30年
6 ─ 命の水を大切に(年寄りに冷水)
7 ─ 転んでも起きればいいや

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レビュー

自著紹介

武藤芳照/東大大学院教授
転倒は、「人類が長い進化の過程で獲得してきた直立二足歩行が円滑にできなくなるほど、身体機能が衰弱した結果を象徴している事象」と捉えることができる。その論理を基に、予防の具体的実践として、2007(平成9)年、東京厚生年金病院に日本初の「転倒予防教室」を創設して10年の歳月が流れた。その間に生み出されたものが、本書の基盤となった『転倒予防教室―転倒予防への医学的対応』(初版1999年、第2版2002年、小社刊)と転倒予防医学研究会(2004年発足)である。
その「転倒予防教室」と「転倒予防医学研究会」のメンバーおよび全国のさまざまな分野で転倒予防の研究と実践に関わる多彩な執筆人による論述は、転倒の幅広さと奥深さを物語っている。転倒についての理論と実践がまさに「百科」繚乱に咲き誇っているようにみえる。転倒というプリズムを通して、医学の実践的研究と社会的対応の姿をみつめて頂きたい。

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【書評】広範囲の内容を網羅する「百科」に値する1冊

福田 寛二/近畿大学医学部整形外科・リハビリテーション科教授
現在、日本は世界に類を見ない速さで高齢社会を迎えつつある。75歳以上を対象とした後期高齢者(長寿)医療制度が導入され、我が国ではいかに少子化が進み、以前のような家族で高齢者を支えていく体制が崩壊したかが改めて認識させられた。
このような社会背景の中、転倒による骨折やその恐怖からの引きこもりといった転倒後症候群は、高齢者のQOLを著しく低下させる。いかに転倒を予防するかは、健康寿命(日常生活に介護を必要としない、心身ともに自立的な状態で生存できる期間)をどのように延ばしていくかと、表裏一体のテーマである。
編者である武藤芳照先生は、早くからこの課題への取り組みを行ってきた。その力点は、高齢者のみに置かれがちだが、実は体育を含めた小児期の運動が重要であるというのが根底にある。しかしながら、骨折や寝たきりによる要介護者が増え、社会的負担が急増する現実を前に、なんらかの早急な予防的手段を迫られたのも現実である。東京厚生年金病院で始まった「転倒予防教室」は、その最大の成功例といえる。
本書では、その10年の歴史に触れるとともに、転倒予防医学研究会事業の一環として全国展開された「一日転倒予防教室」における各地の取り組みが紹介されている。さらに、骨粗鬆症の成り立ちや、転倒機序などの基礎的研究に始まり、実に広範囲の内容が網羅されている。生活環境・栄養・薬物療法・行政の取り組みなど、多様な執筆陣を見るだけで本書が「百科」の名に値することがわかる。
特筆すべきは、入院患者の転倒予防や高齢者の転倒予防のための運動プログラムが、きわめて具体的に呈示されていることである。したがって、新たに転倒予防に取り組もうとする読者にとっては、実に多くの情報が含まれている。
本書には、「一人ひとりが健やかで実りある日々を過ごすため」(「転倒予防教室」修了証の言葉より)に必要なことは何かという編者の思いが込められている。医療、保健、教育、福祉、体育の関係者に是非お勧めしたい1冊である。

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