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NIPPON DATAからみた循環器疾患のエビデンス

日本発のエビデンス“NIPPON DATA”のすべてがわかる!

定価:7,370円
(本体6,700円+税)

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編著: 上島弘嗣(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生部門)
判型: B5判
頁数: 370頁
装丁: 2色刷
発行日: 2008年07月10日
ISBN: 978-4-7849-5393-6
版数: 第1版
付録: -

国民を代表する集団の長期コホート研究 NIPPON DATAの成立から現況まで、その得られた知見を解説しました。本研究で得られた成績は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の参考資料として、また「高血圧治療ガイドライン」にも文献として多く引用されています。日本のエビデンスとしての価値が認められました。患者指導の場で本研究で得られたエビデンスを活用できるよう「患者指導、保健指導としての図表」を巻末にまとめました。

診療科: 内科 循環器内科

目次

第1章 循環器疾患の疫学
1 わが国の循環器疾患とその危険因子
2 高血圧の疫学
3 生活習慣の改善による高血圧の予防と治療
4 メタボリックシンドロームの比較疫学
5 肥満の疫学
6 発症登録からみた罹患率の動向

第2章 NIPPON DATAの成立と追跡方法
1 NIPPON DATAの成立と追跡方法〔追跡補記(1)保健所統合、個人情報保護法成立以降の状況/追跡補記(2)ADL、QOL調査より〕
2 コホート研究と個人情報の保護

第3章 NIPPON DATAからみた循環器疾患の危険因子
1 血圧水準と循環器疾患〔(1)血圧の循環器疾患への影響/(2)年齢と最高血圧と最小血圧の影響/(3)脈圧と循環器疾患/(4)メタボリックシンドロームと高血圧対策〕
2 脂質異常症〔(1)高コレステロール血症と虚血性心疾患/(2)高コレステロール血症と脳卒中/(3)総コレステロール血症と非循環器疾患死亡(因果の逆転)/(4)HDL-コレステロール血症と循環器疾患・総死亡〕
3-1 喫煙の循環器疾患への影響
3-2 喫煙習慣とがん
3-3 喫煙による平均余命、生涯リスクへの影響
3-4 喫煙のリスクはコレステロールレベルによって変わるか?
3-5 喫煙と高血圧は日本人の循環器疾患死亡の何%を説明するのか?
4 飲酒と高血圧
5-1 糖尿病と脳卒中
5-2 糖尿病と冠動脈疾患(CHD)-NIPPON DATA80の解析から
5-3 HbA1cと循環器疾患-NIPPON DATA90から
6-1 リスクの重積と循環器疾患-NIPPON DATA80
6-2 メタボリックシンドローム危険因子の重積と循環器疾患-NIPPON DATA90
7 循環器疾患の性差とその要因
8-1 心電図異常と総死亡-Minnesotaコード別の死亡リスク
8-2 左室高電位と循環器疾患リスク
8-3 心電図異常と総死亡、循環器疾患-心房細動と死亡リスク
9 安静時心拍数と循環器疾患死亡、総死亡の関連
10 卵の摂取と循環器疾患
11 魚の摂取と循環器疾患
12-1 肥満(BMI)と脳卒中の関連
12-2 肥満と生命予後-肥満と血圧の脳卒中への影響(交互作用の検討)
13 身長と脳卒中死亡の関連-小児期の社会経済要因の変化は脳卒中減少に貢献したか?
14 血清アルブミンと循環器疾患・総死亡
15 蛋白尿と生命予後
16 腎機能と生命予後
17 尿酸と生命予後
18 γ-GTP-単なる飲酒のマーカーか?
19 白血球数と循環器疾患
20-1 社会経済要因と循環器疾患-都市・農村と循環器疾患の関連
20-2 社会経済要因と循環器疾患-職種と循環器疾患の関連
21 既往歴の循環器疾患予測能-高血圧既往歴と循環器疾患死亡

第4章 ADL,QOLと循環器疾患、健康長寿
1 健康長寿の要因
2 高齢者日常生活動作の5年間の推移

第5章 健康度評価システム

第6章 NIPPON DATAの健康施策とガイドラインへの貢献

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序文


NIPPON DATAとは、“the National Integrated Project for Prospective Observation of Non-communicable Disease And its Trends in the Aged”の略称である。
この本は、わが国における循環器疾患の代表的なコホート研究の一つとなったNIPPON DATAのすべての知見をわかりやすく記述することを目的とした。
永らく、循環器疾患の疫学、予防医学の発展と現状を理解し、将来の循環器疾患対策のあり方や、研究の方向を定めるための教科書的なものが欲しいとの指摘があったが、そのことを宿題にしたまま10数年が経過した。本書はNIPPON DATAの成立から現況まで、その得られた知見を解説する中で、循環器疾患の全体像を把握できるようにした。したがって、本書は循環器疾患の疫学研究者のみならず、臨床研究に従事している臨床医、これから循環器疾患を専門にしようとしている初期の臨床研修を終えた医師、公衆衛生・保健医療専門職のすべての人にわかるような記述に心がけた。
さらに本書の特徴として、厚生省の断面調査であった1980年、1990年の循環器疾患基礎調査がどのようにしてコホート研究へ発展したかの歴史的な経過を記述した。これは、多くの臨床研究において追跡調査が最も重要な臨床試験の成否を分ける案件の一つであるが、NIPPON DATAにおける追跡の方法は今後の臨床研究に役立つものと考え、その経過をありのまま記述した。
また、この本の最後の部分にNIPPON DATAから得られた重要な知見の図表の一覧を「附録」として解説付きで掲載した。この図表一覧は、日常診療における患者教育や、健診後の保健指導における補助教材として役立つものと考えている。
NIPPON DATAの成立とその後の成功は、全国保健所長会の協力と1994年に当時の厚生省疾病対策課の佐藤敏信課長補佐の英断によって成り立った。また、本研究は成立当初から班研究として、主に日本循環器管理研究協議会に集う人々を中心に進められてきた。それは、1980年および1990年の循環器疾患基礎調査そのものが、日本循環器管理研究協議会の事業として始まり、その後の追跡調査(NIPPON DATA)も、日本循環器管理研究協議会の1994年当時の理事長、飯村 攻札幌医科大学第2内科学教授(現、札幌医科大学名誉教授)の事業として実施されたことによる。
以後、班研究は2?3年おきに厚生労働省の科学研究費と国立循環器病センター循環器病委託費によって維持・発展し、現在(2007年度)においても、班研究として継続されている。したがって、広く班研究の構成員に追跡データが公開され、その成果は班員および班員の研究協力者により論文の作成がなされてきた。この点も、共同研究の新しいあり方を示す事例として意義あるものとなっている。
最後に、NIPPON DATAは国民を代表する集団の長期にわたるコホート研究となっていることと、その追跡率の高い点において、国民の実態を反映するコホート研究となっている点に優れた特質がある。そのような貴重な国民の財産から生まれたコホート研究の成果が、広く国民の循環器疾患対策に日々従事している方々にとっての、わかりやすい入門書かつ専門書となるようにと願っている。そして、ひいては日本の循環器疾患予防対策に役立つことを願っている。

2008年5月
NIPPON DATA研究班主任研究者
滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門教授
上島弘嗣

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レビュー

自著紹介

上島弘嗣/滋賀医大教授
わが国における循環器疾患の代表的なコホート研究の一つ「NIPPON DATA」で得られた循環器疾患の危険因子(血圧水準、脂質異常症、喫煙、飲酒、糖尿病、リスクの重積、メタボリックシンドローム、性差、心電図異常、左室高電位、心房細動、安静時心拍数、卵・魚の摂取、肥満、身長、血清アルブミン、蛋白尿、腎機能、尿酸、γ-GTP、白血球数、社会経済要因、既往歴など)のデータをわかりやすくまとめました。さらに、巻末には、「患者指導、保健指導のための図表」を附録としてまとめ、日常診療における患者教育や健診後の保健指導における補助材料としての便宜も図りました。
「NIPPON DATA」の成果は、「動脈硬化性疾患
予防ガイドライン(日本動脈硬化学会、2007年)」の参考資料や「高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会、2004年)」の参考文献としても引用されています。根拠ある患者指導に、ぜひご活用下さい。

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【書評】日本発のエビデンス「NIPPON DATA」のすべてがわかる

尾前 照雄/国立循環器病センター 名誉総長
上島教授編著による本書は日本における循環器疾患の現状と将来を理解するための教科書ともいうべき優れた内容の著書である。
NIPPON DATAとは“the National Integrated Project for Prospective Observation of Non?communicable Disease And its Trends in the Aged”の略である。厚生省(現・厚生労働省)主導の循環器疾患基礎調査は1960年代から10年おきに行われていたが、断面調査の域を出なかった。その後、上島教授が中心になり80年、90年の受診者の追跡調査研究が94年から行われた。その成果が本書の主要な内容である。
全国300カ所に分散している対象者1万人の追跡には多くの困難があったに相違ないが、熱意をもってそれを克服された研究グループ、協力を惜しまれなかった保健所の方々、厚生省の支援に感動を禁じ得ない。この規模の追跡調査は日本ではこれまで行われてこなかったもので、その経緯の記述は正に圧巻である。
国民を代表する長期にわたる追跡データは、国際的にも高く評価されるべきである。高血圧診療や動脈硬化性疾患予防のガイドラインなどにこの成績が多く引用されるのも当然であろう。
DATAは10数年の追跡調査(追跡率は常に90%以上)を基に高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、飲酒、食習慣、肥満、社会経済要因、職業、などと予後(循環器疾患、生死)の関係が分かりやすく述べられている。
また65歳以上の年齢層を対象に日常生活動作(ADL)の調査とその低下要因についても記述されている。健康寿命の延長が今後の重要課題であるので、その問題にも触れられている。
特記したいのは患者指導、保健指導のための図表が、日本人循環器疾患のエビデンスとして簡明な説明とともに付録として巻末に添付されていることである。
Evidence based medicineのあり方を教示してくれる恰好の著書と思う。循環器疾患の予防と予後に関心のある臨床医、公衆衛生・保健医療のすべての人々に広く推薦したい。

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