Ⅰ 総 論
1 オンライン診療と遠隔モニタリング
2 わが国のオンライン診療の歩み
3 テレナーシングと遠隔医療(テレヘルス)
4 現状のオンライン診療に対する診療報酬の概要
5 新型コロナウイルス感染拡大によるオンライン診療に関する規制緩和の直近の動向と遠隔医療関連の法令
6 オンライン診療の光と影〜精神科臨床の現場から〜
Ⅱ オンライン診療 Doctor Patient
1 循環器診療におけるオンライン診療
2 小児科におけるオンライン診療
3 産婦人科・周産期医療におけるオンライン診療
4 脊椎脊髄外科におけるオンライン診療
5 皮膚科におけるオンライン診療
6 糖尿病診療におけるオンライン診療
7 てんかん・頭痛におけるオンライン診療
8 難病患者におけるオンライン診療
9 精神科領域におけるオンライン診療
Ⅲ オンラインモニタリング Doctor Patient
1 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の遠隔モニタリング加算
2 在宅酸素療法指導管理料の遠隔モニタリング加算
Ⅳ 医療者間のオンライン診療 Doctor Doctor
1 画像診療領域におけるD to Dのオンライン診療
2 病理診断領域におけるD to Dのオンライン診療
3 遠隔ICUにおけるD to Dのオンライン診療
今や“オンライン”は,その言葉を聞かない日はないくらい,仕事や教育になくてはならないツールになってきています。
もちろん医療のオンライン化もこのコロナ禍を機に,非常に注目されてきています。既にオンライン診療は遠隔診療のひとつの形として,欧米では医師︲患者間あるいは医師相互の情報交換の手段として発展してきています。
わが国でも厚労省はじめ日本遠隔医療学会などで,1990年代から「医療法」や「個人情報保護法」などに抵触しないように,少しずつその枠組みを立ち上げてきていました。
そして2018年に,厚労省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定すると同時に,それまであった画像・病理診断や心臓のペースメーカーに関する先駆的オンライン診療報酬に加え,特に慢性疾患を中心にいくつかのオンライン診療報酬システムの承認に至りました。もちろんその背景には,IT技術の急速な進歩が挙げられます。
しかしながら,オンライン診療が外来・入院・在宅につぐ第4の診療形態として位置づけられはしたものの,さて実際にそれまでどのようにやってきたのか,またその新しい制度のもとで,これから各科それぞれどのようにやっていくのかということになると具体的方法を示す手引書がありません。一方,IT関連企業は2015年以降この市場に続々と参入してきており,臨床現場としては閉塞感が漂ってきておりました。
本書はまさにそれを切り抜けるべく企画され,すぐにオンライン診療に対応できるよう総論と各論から成り立っていますが,総論はこのオンライン診療の歴史や制度を概括し,各論では診療のコツなどを随所にわたり公開して頂いています。
各科の先生方,また医療に関係するすべての職種の方々は,本書を当該科の部分からお読み頂き,そしてそのあと総論を読んで下さい。おそらくすぐにオンライン診療の立ち位置とそのポイントがわかり,どう進めていくべきかが理解できると思います。
オンライン診療は,患者側の圧倒的な利便性のみならず,医療者側からも対面診療にはないメリットを十分利用できるツールとして確立していくべきものと考えております。
なおオンライン診療開始時には,厚生労働省が指定する「オンライン診療研修」を可能な限り速やかに受講するように努めることが,本年度になり求められてきていますので,この点だけは追加させて頂きます。
この書籍が,オンライン診療の普及に少しでも貢献でき,また患者さんの満足度上昇とともに医療全体のレベルの向上に寄与できれば編著者として望外の喜びであります。
なお常に編集にご協力頂いた,日本医事新報社書籍課の村上由佳女史をはじめ,コロナ蔓延の中,幾度も推敲頂いた著者の先生方に深謝いたします。
2021年5月 編著者 蝶名林直彦