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リンパ浮腫

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
荒牧典子 (慶應義塾大学医学部形成外科学教室講師)
貴志和生 (慶應義塾大学医学部形成外科学教室教授)
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  • ■疾患メモ

    浮腫とは,組織間隙に過剰な水分が貯留した状態であり,そのうちリンパ管が狭窄や閉塞することで組織液(リンパ液)の回収異常によって起こる場合をリンパ浮腫という。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    原発性のリンパ浮腫も存在するが,一般的には乳癌や子宮癌・卵巣癌・前立腺癌などに対するリンパ節郭清を伴う手術後や放射線治療後に四肢に発症する続発性リンパ浮腫が多い。

    続発性のリンパ浮腫は,手術直後より生じる場合もあれば,数年~十数年経過して発症する場合もある。

    初期は,夕方に足や踵,手の甲の腫れが現れ,翌朝には消失する可逆性であることが多い。

    進行すると浮腫が重症化し消失せず,非可逆性となり,組織間隙へのリンパ液の漏出が続くことにより,皮膚が線維化して硬く変形し,脂肪組織の増生が起こる。

    蜂窩織炎を合併するとリンパ浮腫が悪化することがある。

    【検査所見】

    浮腫の訴えに対し,静脈性浮腫や廃用性浮腫を除外する。問診や視触診で診断できることもあるが,静脈性浮腫などの鑑別や病期の評価を行う上で,リンパシンチグラフィー,インドシアニン・グリーン(indocyanine green:ICG)蛍光リンパ管造影法,MRL(MR Lymphangiography)などが行われる。

    リンパシンチグラフィーは,放射性同位元素で標識されたコロイドをトレーサーとして足背(手背)に皮内注し,リンパ節やリンパ管を標的臓器としてリンパの流れをガンマカメラで撮影する検査である。リンパ浮腫では,所属リンパ節の描出不良および欠損とリンパ管の拡張,蛇行や側副路,dermal backflowの所見が典型的で,リンパ管機能の全体像の把握に適している。

    ICG蛍光リンパ管造影術は,ICGを足背(手背)に局注し,PDE(近赤外線)カメラで撮影することで,体表からリンパの走行をリアルタイムに確認できる検査であるが,深部の観察ができないといった欠点がある。

    MRLは,造影剤を足背(手背)に局注した後,MRI撮影を行うもので,リンパ管の走行を三次元的に描出することが可能であり,dermal backflowなどについて,より詳細な浮腫の評価も可能となった。

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