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大動脈弁閉鎖不全症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
山本一博 (鳥取大学医学部病態情報内科分野教授)
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  • ■疾患メモ

    大動脈弁の不完全閉鎖のために大動脈から左室への血液の逆流が生じて左室の容量負荷をきたし,左室が拡大し遠心性肥大を起こす。

    原因としては先天性二尖弁や粘液腫様変性など弁自体に原因がある場合と,大動脈解離や大動脈炎症候群など大動脈の異常による場合がある。

    大動脈解離などに基づく急性発症は左室の代償機転が働かず,左室拡張期圧上昇から急性肺うっ血をきたし,重症例では心原性ショックを呈する。

    慢性例では,代償機転により左室拡張期圧容積関係の右方シフトが起こり,左室拡張期圧の上昇を伴わないで左室容積の拡大をきたすため,当初は無症状で経過する。しかし代償が破綻すると,左室拡張期圧の上昇を引き起こし,心不全を発症する。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    自覚症状:特異的な症状はなく,労作時息切れなどの心不全症状,胸痛や失神などを認める。

    他覚所見:高度大動脈弁閉鎖不全(aortic regurgitation:AR)では,Erb領域での拡張期心雑音,脈圧の増大とそれによる末梢での特徴的所見(de Musset's sign,Corrigan's pulse,Traube's sign,Quincke's signなど)を認める。そのほかに心不全に伴う所見(下腿浮腫など)を認める。

    【検査所見】

    心電図:特異的所見はない。

    胸部X線:心胸郭比の拡大,大動脈のelongationなどを認めることはあるが,特異的所見はない。

    心エコー:大動脈から左室への拡張期逆流をカラードップラで認める。容量負荷による左室拡大も認める。経過時間,逆流量などによりさらなる異常(左室駆出率低下,僧帽弁逆流,肺高血圧,三尖弁逆流など)を認める。原疾患により上行大動脈の拡大や解離,大動脈弁の逸脱などを認めることがある。

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