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『ジェネリック』[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(196)]

No.4903 (2018年04月14日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-04-11

最終更新日: 2018-04-10

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いまやジェネリック医薬品の意味を知らない人の方が少数派だろう。テレビでのCMもよく目にする。言わずとしれた、先発品の特許が切れた後、他のメーカーが「同じ」薬剤を製造・供給するものだ。

その歴史-ほとんどは米国における歴史-を詳しく書いたのが『ジェネリック』(ジェレミー・A・グリーン著、みすず書房)である。それは、ブランド薬メーカーとジェネリック薬メーカーの壮絶な闘いの歴史だ。闘いの主なテーマは、はたしてジェネリック薬が本当に先発薬と「同じ」であるかどうかであった。もちろん、ジェネリック薬メーカーは同等であると主張する。

薬剤が同等である、と言った場合には二つの意味合いがある。一つは化合物としての同等性であり、もうひとつは効果の面における生物学的な同等性である。

薬効は、必ずしも主成分だけでは決まらない。添加されている物質や剤型によって、吸収速度などが異なり、効き目も違ってくる。成分的な面での化学的同等性は検証することが比較的たやすいが、効き目についての生物学的同等性を追い求めるのは困難、厳密な意味ではほぼ不可能だ。

いわば「同じであって同じでない」のである。ジェネリック薬の最大のメリットは安価なところだ。完全な生物学的同等性の検証が義務づけられたら、コスト面でのメリットがなくなりかねない。だから両者は、重要な点が同じなので互換性があるとみなさざるをえない、という結論なのだ。

日本では、そういった議論はほとんどなされず、米国での判断がそのままに受け入れられている。いまさら検討したところで、同じ結論しか出ないだろう。しかし、そこへ至るまでに半世紀もの激論の歴史があったことは覚えておきたい。

ジェネリックメーカーというと、比較的小規模な会社というイメージがあるかもしれないが、決してそうではない。世界最大のテバ社は、売上が220億ドルを上回り、世界12位の医薬品メーカーにまでなっている(2016年)。それだけではない。新薬の開発まで手がけているというから驚きだ。

かつては「いかがわしい薬」として登場したジェネリック薬だが、今や、それなしに医学の未来を語ることができない時代になっているのである。興味ある人にはぜひ一読をお勧めしたい。

なかののつぶやき

「みすず書房の出版物だけあって4,600円とやや高価ではありますが、読み応えあります」

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