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入試ミス リターンズ[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(192)]

No.4899 (2018年03月17日発行) P.63

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-03-14

最終更新日: 2018-03-13

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我らが大阪大学、入試問題についてのミスが発覚し、全教職員が気を引き締めていくように、とお達しがあった数日後、試験監督の居眠りイビキが報じられてトホホ。立っていたら居眠りはできないだろうと、今後、試験監督者用の椅子を置かないようにする、というまことしやかな噂まで流れたけれど、さすがにガセだった。

座ってやらせてもらえた面接試験だが、聞いてはいけない事項が結構あって、おもろそうな質問は、したくてもほとんどできない。それに、受験生は医学部入試面接の対策本とかで準備万端。用意してきたとおりを記憶から呼び起こして話すだけなので、当然のように話はあまり弾まない。

意地悪く、ちょっとした変化球を投げてみると、ことばに詰まって何も言えなくなる子がけっこういる。しかし、さらにつっこんだりすると、圧迫面接とか苦情が来かねないから、自粛。不自由なことだ。

試験問題の作製も、高校の教育内容という縛りがあるので、不自由なことである。その上、出題ミスに対して、マスコミはじめ世間の目は異常に厳しい。細心の注意を払うのは当然だが、いくらがんばったところで、完全な無謬性を求めることなど不可能だし、非現実的だと認識すべきだろう。

あまり厳しくしすぎると、出題委員の引き受け手がいなくなる懸念がある。それに、大学教員によるチェックをいくら増やしたところで、所詮、入試については素人だ。おのずと限界がある。昨年度の出題ミスをうけて、さらに数十人の教員が入試問題のチェックに投入されることになった。しないよりはましだが、素人が束になってかかってもプロにはかなうまい。

きわめて重要な業務であるけれども、入試問題の作成は、大学教員にとって本業ではない。それに対して、予備校の先生たちはプロである。何年も何年も、それも連日、入試問題を解説し、自ら予想問題を作り続けておられるのだから差は歴然だ。

ちょっと悔しいけれど、入学試験の当日に、問題に瑕疵がないかを予備校の迅速な精査に委ねる、というのがいちばん現実的ではないかと思う。万が一誤りが見つかれば、試験場で何らかの指示、あるいは採点での考慮をおこなえばいいのである。

この内容は大阪大学の正式見解ではありません。って、言わんでもわかりますわな。

なかののつぶやき
「入試問題は、その内容がどうしても限定される。だから、年数がたつにつれて、新規な問題を考案するのはどんどん至難の業になっていくのは自明のことだ。かといって、過去問の練り直しというばかりにはいかない。と考えると、現行の入学試験って、完全に制度疲労をおこしてると思うんですけどねぇ。どうしたらええんでしょう」

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