株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

発作性心房細動消失時にはNOACを中止してよいか?【左房・左心耳血流の低下,内膜障害,凝固系亢進の3点を慎重に見極めて判断する】

No.4864 (2017年07月15日発行) P.60

鈴木信也 (心臓血管研究所付属病院循環器内科医長)

登録日: 2017-07-11

最終更新日: 2017-07-11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 発作性心房細動が完全に消失(軽快)した場合,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(non-vitamin K antagonist oral anticoagulants:NOAC)を中止してよいものでしょうか。

    (大阪府 Y)


    【回答】

    発作性心房細動患者への抗凝固薬の是非はいつも迷うところであり,明快な回答が難しいと感じます。ここでは,「Virchowの3原則から患者の左房内の状況をイメージする」という観点で,私自身の判断基準を説明します。

    「Virchowの3原則」とは,①血流の異常,②血管壁の異常,③血液成分の異常,の3要素が血栓の成因となるというものです。これを心房細動の左房内血栓に当てはめれば,①左房・左心耳血流の低下,②内膜障害,③凝固系亢進,と言い換えることができるでしょう。

    「発作性心房細動が消失(軽快)」という状態は,①の「左房・左心耳血流の低下」が「現時点では起こっていない」という状況を指していると言えます。発作時間があまり長くない,しかも発作時の症状が明確にわかる人の場合は,「発作性心房細動が出ていない」という一定レベルの判断が可能ですが,無症状の人も4割程度いると考えられますので,慎重に判断すべきです。「完全に消失した」と断言できないところが,発作性心房細動の難しさです。特に②や③の要素が強い人については,「もしかしたら知らない間に長い発作が起きているかもしれない」という前提に立った判断が必要になります。

    残り756文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top