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医療・介護領域で取り入れることができる薬剤耐性菌の感染対策 【手指衛生等の基本を守りつつ,多様な暮らしの形に応じた柔軟な対策が求められる】

No.4858 (2017年06月03日発行) P.57

森井大一 (大阪大学大学院医学系研究科)

高山義浩 (沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科医長)

登録日: 2017-05-31

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  • 薬剤耐性菌問題は,これまで院内感染の問題(特に急性期医療での)として主に論じられてきましたが,医療の機能分化が進む中で,急性期以外の医療機関や在宅医療,介護における対策も考えなければいけない時代に入っているように思います。日常生活の一部とも言えるようなこれらの医療・介護領域で取り入れることができる感染対策にはどのようなものがあるのでしょうか。沖縄県立中部病院・高山義浩先生にご教示をお願いします。

    【質問者】

    森井大一 大阪大学大学院医学系研究科



    【回答】


    自宅や高齢者施設のような暮らしの現場は個別性が高く,一般論としての議論は意味をなさないことが多いものです。1つの生活習慣の背景には,いろいろな歴史や事情が詰め込まれています。暮らしに伴走する医療者は柔軟であるべきで,CDCガイドラインのような理想を掲げるばかりでは仕方がありません。家政婦がいるような裕福な家庭もあれば,ゴミ屋敷に暮らす人もいます。介護施設も多様です。同じ病原体への感染対策だとしても,やるべきこと,やれることはまったく違います。もちろん,病院で行う感染管理とも大きく異なることは言うまでもありません。

    (1)手指衛生などの標準予防策を遵守する
    そうした中でも守るべき基本があります。それは,訪問スタッフや施設職員が,手指衛生などの標準予防策を遵守することです。これは介護領域でも共通して到達すべき感染対策と言えます。加えて,多剤耐性菌を保菌している利用者については,ケアや入浴の順序を最後にしたりといった,すぐにできそうな工夫から取り組んで頂ければと思います。一方で,専門家ではない家族については,感染症に応じた対策を段階的に提案しながら,できる範囲でやってもらえればゴールと考えます。

    感染防護具を日常的に用いるような対策を介護領域に求めるべきか,現時点では明らかではありません。標準予防策だけでは施設内に多剤耐性菌が蔓延してしまうのか,発症率や死亡率などのアウトカムに影響があるのか,確認することが先だと考えます。

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