編著: | 菅谷憲夫(神奈川県警友会けいゆう病院小児科/感染制御、慶應義塾大学医学部客員教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 298頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2021年10月29日 |
ISBN: | 978-4-7849-5482-7 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
鼎談 インフルエンザ,COVID-19のトピック
chap. 1 総 論
A.COVID-19とインフルエンザの同時流行はあるか
B.これからのインフルエンザ対策
C.鳥インフルエンザの最新状況
chap. 2 ウイルス学的知見
A.インフルエンザウイルス
B.SARS-CoV-2
chap. 3 予防・治療
A.COVID-19の臨床
B.小児のインフルエンザの予防・治療
C.成人・高齢者のインフルエンザの予防・治療
D.妊婦のインフルエンザ,COVID-19の予防・治療
chap. 4 ワクチンの有効性
A.インフルエンザワクチン:小児
B.インフルエンザワクチン:成人
C.各種COVID-19ワクチンの特徴と開発状況
chap. 5 治療薬
A.インフルエンザ治療薬
column 1.バロキサビルの耐性—基礎から
B.COVID-19治療薬:経口抗ウイルス薬の最新情報
chap. 6 検査・診断
A.インフルエンザとCOVID-19の迅速診断
column 2.インフルエンザとCOVID-19の同時流行時の検査
column 3.呼吸器ウイルスの検体採取
column 4.COVID-19のPCR診断
B.COVID-19の抗体検査
column 5.COVID-19の市販の診断キット使用における注意点
chap. 7 院内感染対策(インフルエンザ,COVID-19)
column 6.高齢者施設のインフルエンザ,COVID-19対策
chap. 8 学校での感染対策
chap. 9 インフルエンザ脳症の診断・治療
chap. 10 COVID-19後遺症
Q&A
Q 1 インフルエンザワクチンとCOVID-19ワクチンの同時期の接種について
Q 2 抗インフルエンザ薬を投与した場合のウイルス排出期間はどのくらいですか?
Q 3 インフルエンザ発症後,12時間以内の感度は低いので,検査まで12時間以上待つべきでしょうか?
Q 4 微熱,あるいは無熱のインフルエンザ患者の頻度について。また,無熱のインフルエンザ抗原陽性患者に抗インフルエンザ薬は必要でしょうか?
Q 5 気管支喘息患者がインフルエンザに罹患した場合のステロイド吸入・内服投与について
Q 6 気管支喘息患者はCOVID-19に罹患しにくいのでしょうか?また吸入ステロイド薬ブデソニドはCOVID-19治療に有効でしょうか?
Q 7 血液腫瘍患者,HIV患者など免疫が低下している場合のインフルエンザワクチン,COVID-19ワクチンの効果について
Q 8 マスク・手洗い・うがい,室内空気を対象とした種々の空間除菌製品のインフルエンザとCOVID-19に対する予防効果について
Q 9 インフルエンザの院内感染防止対策として,オセルタミビルの治療量を予防として使用するのはどうでしょうか?
Q10 沖縄でのインフルエンザとCOVID-19流行の特徴について
SARS-CoV-2は, 有効性の高いワクチンが開発され, ワクチン接種を進めれば麻疹や天然痘と同じように人類世界から根絶されると考えられていたが,最近,米国CDCは,デルタ株の出現により“the war has changed”と述べ,ワクチンによる集団免疫達成は困難なことを認めた。今後もワクチン未接種者を中心に流行は続き,多くのブレイクスルー感染も発生する時代となっていく, つまり,SARS-CoV-2との戦いはこれからも続くと表明したのである。
昨シーズンは, 世界的にインフルエンザの流行がなかったことから, わが国では「インフルエンザは,もはや大きな問題ではない。インフルエンザワクチン接種の必要性は低下した」という意見も,一部で聞かれることがある。しかし,インフルエンザは我々の身近な国々,バングラデシュ,インドなど南アジアで小規模から中規模の流行が続いている。最近,日本でも経験したRSウイルスの季節はずれの大流行を見れば,海外からインフルエンザが入ってくれば,大規模な流行となることが懸念されている状況にある。世界各国はSARS-CoV-2とインフルエンザの同時流行を警戒しているが,英国政府は今年のインフルエンザは早期に流行が始まり,昨年,流行がなかったために,例年よりも大きな流行になる可能性を指摘して,インフルエンザワクチン接種を呼びかけている。
今年の秋から冬にインフルエンザが出現し, その時点でSARS-CoV-2との同時流行が起こると,臨床現場は今までになく混乱する。症状からはインフルエンザとCOVID-19の鑑別はできないし,インフルエンザは小流行であっても患者数は600万人以上となるため,発熱外来のみにインフルエンザ診療を任せることは不可能であり,一般の病院やクリニックが発熱患者の診療を積極的に引き受ける必要がある。
SARS-CoV-2は“the war has changed”となり,インフルエンザは熱帯,亜熱帯の国々がウイルスの保存庫となっている状況を鑑み,今年から,本書の題名を『インフルエンザ/新型コロナウイルス感染症診療ガイド』と変更した。両ウイルスの最新の知見をまとめていくことは,本書の重要な役割と考えている。