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法医解剖死亡児から見る児童虐待【虐待死の鑑別には特殊で広範な専門性と広い視野が求められる】

No.4856 (2017年05月20日発行) P.55

鵜沼香奈 (東京医科歯科大学法医学講師)

登録日: 2017-05-18

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児童虐待(child maltreatment)への法整備が進む中,2016年度の児童相談所への相談事例は,速報値で10万3260件と過去最高であり,児童虐待の防止等に関する法律施行前(1999年度)と比べ8.9倍と著増し,虐待死は診断されているだけで年間50件以上と高推移である。

児童虐待における法医学の重要な役割は,生体・死体にかかわらず,虐待であるか否かの鑑別を正確に行うことである。傷の評価だけでなく,栄養状態や代理によるミュンヒハウゼン症候群による複雑な介入行為の評価など,特殊で広範な専門性が要求される。解剖では,性器出血での受診歴がありながら,ホルモン検査のみで「異常なし」とされていた5歳未満児死亡例など,虐待が認知されていれば救えた命と思われる事例に遭遇する。一方,揺さぶられっ子症候群(shaken baby syndrome)の三徴(神経機能不全,硬膜下血腫,網膜出血)があっても,捜査の結果,虐待ではないと認められた事例も報告されており1),状況は複雑である。

臨床医はどのレベルで児童相談所などに通告すべきか悩むことが多いのではないかと思われる。個人や単一診療科のみで児童虐待の問題に対応することは困難であり,複数の診療科の医師,法医学者,看護師,ソーシャルワーカーなどの関連医学領域の,総力をあげた連携が不可欠である。

【文献】

1) Miller D, et al:Am J Forensic Med Pathol. 2015; 36(2):111-20.

【解説】

鵜沼香奈 東京医科歯科大学法医学講師

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