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(3)NOACやワルファリン療法中に発症した脳梗塞や大出血への対応 [特集:新しい経口抗凝固薬はこう使いこなす]

No.4730 (2014年12月20日発行) P.34

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-15

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  • 抗凝固療法中に脳梗塞を発症した場合,抗凝固療法の強度を確認し,急性期血栓溶解療法の適応判断を行う

    急性期抗凝固療法の有用性は確立しておらず,梗塞巣の大きさや発症後の経過時間などを勘案して症例ごとに考慮せざるをえない

    抗凝固療法中に脳出血を発症した場合,抗凝固薬の休薬,適切な輸液,厳格な血圧管理,抗浮腫療法,凝固因子の補充,および必要時に血腫除去術を検討する

    出血性合併症により抗凝固療法を中断した場合,塞栓症発症のリスクを勘案し,抗凝固療法再開の可否を検討する

    1. わが国の抗凝固療法の実際

    非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)は脳梗塞の危険因子であり,NVAF患者の脳梗塞発症率は平均5%/年に達する。これまでに行われた大規模臨床試験で,NVAF患者における適切なワルファリン療法が脳梗塞の発症を約7割抑制することが明らかにされている1)。しかし,伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)によれば,日本の臨床現場における抗凝固療法の普及率は53.1%と約半数にとどまり,抗凝固療法導入例であっても,ワルファリンが至適治療域以下にコントロールされている例が多く,十分に管理されていないことが問題点として指摘されている2)。ワルファリン療法では,用量管理が不十分であると,脳梗塞や脳出血のリスクが高くなるため,個々の症例に合わせてリスクを層別化し,適切な用量管理を行うことが重要である。一方,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulants:NOAC)は,モニタリングによる用量調節はできないので用法・用量の遵守が大切である。本稿では,ワルファリンやNOAC療法中に発症する脳梗塞や脳出血の頻度や急性期の対応を概説する。

    2. 抗凝固療法中の脳梗塞の頻度

    ワルファリンによる抗凝固療法中であっても脳梗塞を発症することがある。Hylekら3)は,二次予防でワルファリンを内服している患者の脳梗塞年間発症率は,プロトロンビン時間国際標準比(prothrombin time-international normalized ratio:PT-INR)1.5未満で7.7%,PT-INR 1.5~1.9で1.9%,PT-INR 2.0~2.5で0.4%,PT-INR 2.6~3.0で0.9%,PT-INR 3.1~3.5で0.7%,PT-INR 3.6~3.9で0.4%,PT-INR 4.0~4.5で1.4%,PT-INR 4.6以上で2.6%と,ワルファリンの強度が低下するほど脳梗塞の発症率が増加すると報告している。実際,筆者ら4) の報告でワルファリン内服中に心原性脳塞栓症を発症した602例の発症時PT-INR値をみてみると,心原性脳塞栓症発症時のPT-INR 1.5未満が68%とワルファリン強度が低下すると脳梗塞を発症したため,不十分なワルファリン管理は脳梗塞のリスクと考えられる。
    NOAC内服中の脳梗塞発症率はワルファリンと同等かそれ以下である。RE-LY(Randomized Evaluation of Long-term Anticoagulant Therapy)試験の結果から,直接トロンビン阻害薬のダビガトランは,脳卒中/全身塞栓症の発症をワルファリン(1.70%/年)と同等(110mg×2回/日群で1.53%/年)または有意に抑制(150mg×2回/日群で1.11%/年)することが示された5)
    また,ROCKET-AF(Rivaroxaban Once daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation)試験でも,第Xa因子阻害薬のリバーロキサバン投与後の脳卒中/全身塞栓症発症頻度がワルファリン(2.4%/年)と同等(2.1%/年)で6),ARISTOTLE試験でも,第Xa因子阻害薬のアピキサバン投与後の脳卒中/全身塞栓症発症頻度(1.27%/年)はワルファリン(1.60%/年)に比して有意に低値であることが示された(表1)7)

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