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教室運営と女性医師復職・キャリアパス支援を考える [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.33

中川秀己 (東京慈恵会医科大学皮膚科学講座主任教授)

登録日: 2017-01-01

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各学会・病院等で既に女性医師復職・キャリアパス支援への取り組みが積極的に行われてきている。日本皮膚科学会において女性医師は約半数を占めており、年齢別では45歳以下では約6割であるが30歳以下は7割と多く、2008年以降、その傾向は強まっている。皮膚科医師の多くは入局後5~10年で大学を辞めるが、そのうち実に7割が女性医師であり、40歳以上の大学勤務は女性医師の1割にすぎない。

したがって、女性皮膚科医の多くは指導される側であり、指導側にはほとんどまわっていないことになる。現在、30歳以下の皮膚科医の7割が女性ということを考えると この傾向が続けば、10年後には大学に在籍する働き盛りの40歳前後の皮膚科医は半減してしまうことになる。辞職の要因は妊娠・出産・子育て、夫の転勤であり、女性医師の9割以上が育児中の病棟、当直業務の免除を希望している。安易に考えれば病棟も当直業務も一切行わず、外来のみを行うだけで専門医取得が可能になれば、早期退職の多くはなくなり、女性医師の定着率も上昇するが、それを行えば40歳以下の男性医師が当直、病棟業務の多くをこなさねばならないことになり、疲弊、不公平感を助長させ、皮膚科診療の質の低下をまねきかねない。さらに、関連病院の派遣などにも重大な支障が生じてくることになる。特に大都市圏以外の地域では、交通の便が不便な関連病院への女性医師の派遣はきわめて困難な状況になっている。

女性皮膚科医にとって開業医ならばサブスペシャリティーを持つ、大学勤務医はグローバルかつ独創的な女性ならではの基礎・臨床研究を展開する、病院勤務医はやりがいのある病院ならではの皮膚科診療を実践することが大切であり、そのための支援が重要である。大切なのは女性医師の復職・キャリアパス支援を考えて、教室員全員でバックアップ体制を構築することであるが、教室員の数が少ないところでは困難となっている現状がある。

有効な対策を選択するための事前準備として、女性医師の妊娠・出産・子育て、夫の転勤の動向を前もって掴んでおくことが重要であるとともに、女性医師同士のバックアップ体制を構築することも重要である。

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