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医師不足に関するデータの解釈 [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.24

上本伸二 (京都大学大学院医学研究科長・医学部長・肝胆膵・移植外科教授)

登録日: 2017-01-01

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最近、医師の需給に関連して医学部定員増を継続するか否かの問題が再浮上している。地域医療における医師不足解消の目的で平成20年度から医学部定員に地域枠制度が導入され平成28年度の時点で地域枠入学者は1637人に増加した。

「医師の需給に関する検討会」によれば、平成34年に需要と供給が均衡しマクロ的には必要な医師数は達成できると試算されている。しかし、大学病院や関係病院における医療の現場での医師不足は顕著であり、果たして6年後に医師不足がマクロ視点であっても解消できるのか不安である。そこで、誰でも閲覧できるネット上のデータでわが国の医師数の推移を見てみた。

平成24年に医師数は30万人を超え、順調に毎年4000人のペースで医師が増えていることは明らかである。その10年後の平成34年には34万人を超えることになり、さらに増加した地域枠分1万人が上乗せとなり、35万人を超えることになる。一方、わが国の人口は現在1億2690万人であるが、毎年20万~30万人減少しているので、平成34年には最小見積もりで1億2500万人になる。したがって、人口千人当たりの医師数は2.8人となる。

ここまでの数字に関しては、ほとんど異論はないと思われるが、国際的に見てどうだろうか。わが国の人口千人当たりの医師数が2.2でOECD34カ国中29位であった2011年のデータに当てはめると、2.8は22位のイギリスと同程度となるが、OECDの平均値である3.17には及ばない。さらに、初期研修医に占める女性医師の割合は40%に達する勢いであり、女性の職場環境が欧米に比べてきわめて遅れているわが国においては医師労働力の観点からは避けては通れない問題である。

私のような一介の大学教授が医師の需給に固執するのは、現在の医療と医学教育に関する種々の問題が「売り手市場」と言われる医師不足に起因するからである。地域医療崩壊、専門医制度の頓挫、医師の過酷な勤務状況、若手医師人件費の高騰、そして適性がないのに偏差値のみが高い学生の医学部入学、とすべてが医師不足に連鎖する。一般人の視点で見た場合、国民は怒り出すのではないだろうか。

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