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外国人医療と公的保険で想うこと [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.21

小林米幸 (特定非営利活動法人AMDA国際医療情報センター理事長)

登録日: 2017-01-01

最終更新日: 2016-12-27

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外国人からの無料電話医療・医事相談に5カ国語で365日対応するAMDA国際医療情報センターを開設して25年が過ぎた。相談総数は8万件を超え、最近は外国人患者を目の前にした医師からの通訳依頼も急増してきた。同じ仕事仲間の役に立っているらしいことが嬉しい。同センターの相談内容を読み返すと、外国人医療で今、何が問題となっているかが見えてくる。特に最近、気になるのはわが国に合法滞在している人たちが母国の家族を病気療養のために日本に呼び寄せて公的保険である国保や社保に加入させたいという相談だ。日本人と結婚している親族を訪ねてやってきた人が救急搬送され、医療費が支払えないから公的保険に入れてほしいという相談も多い。母国にいる幼い子どもたちを日本に呼ぶ場合は比較的簡単に公的保険に加入できるようだ。親元で生活することが人道上大切なことと思われているからに相違ないが、それが病気治療のためだとしたらどうだろう? 公的保険の財政状況はきわめて苦しい。

郡市医師会長として市の国保運営協議会に出席していると、毎年のように月額掛け金の値上げが議題に上る。わが国の国民皆保険制度は加入資格を有する外国人も含めた「皆保険」制度であり、すばらしい。その根幹は病に倒れた人を助けるために健康なときにも皆でお金を支払う互助会的発想である。病が治癒したらお金を支払う側になって制度を支えるのである。

国保の月額掛け金の算定方法は自治体の裁量に任されているが、最も多いのが前年の所得税からの算出である。外国人が来日し、自治体の窓口で住民基本台帳に記載されると、その場で国民健康保険に加入できる。そして最も低いランクの掛け金を支払うことになる。次年度は前年度の収入から初めて所得税がかかるが、掛け金は最も低いランクのまま、3年度目になり初めて収入に応じた掛け金となる。高額医療費助成制度を使って治療し、3年度目に帰国してしまったら……まさに保険のうまいとこ取りになってしまう。だからこそ、外国人には来日3年度目までは高額医療費助成制度を含めた使用上限付きの公的保険制度を別途考えるべきと強く思う。差別もいけないが、逆差別もいけない。

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