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たかが手洗い、されど手洗い、手ごわい手洗い! [炉辺閑話]

No.4837 (2017年01月07日発行) P.96

矢野邦夫 (浜松医療センター副院長兼感染症内科科長)

登録日: 2017-01-03

最終更新日: 2016-12-26

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院内感染対策を始めてから20年になる。この間、何を学んだかというと「手洗いが最も大切な感染対策であるが、最も成就困難な感染対策でもある!」ということである。薬剤耐性菌やノロウイルスなどの病原体の多くは医療従事者の手指を介して患者から患者に伝播していく。環境表面に付着している病原体が医療従事者の手指に移動し、そして患者に到達することもある。そのため、手洗いさえ徹底すれば相当数の院内感染を減らすことができる。しかし、手洗いを全医療者に徹底することは難しい。ほとんど不可能といっても過言ではない。人類が火星に永住できるほどの未来になっても困難であろう。

現在、車の自動運転の研究が急速に進歩し、近い将来、交通事故がなくなるのでは、との期待を持っている。これは目的地を設定すれば安全にそこまで連れて行ってくれるシステムと聞いている。手洗いも自動的に実施してくれるシステムが完成すれば、未来の病院では院内感染は激減するであろう。自動手洗いシステムというのは、患者を診察しようと思っただけで、手指消毒を実施してしまう機械が導入されるというものである。手洗いしようと思うだけでよい。

そのような都合のよいシステムが手に入るには100年以上を要するであろう。そのため、それまではどうしたらよいかを考えることになる。自分で手洗いをする意識づけが大切である。すべての医療者が100%実施していることは何かを考え、そこに意識づけを持ち込むとよいかもしれない。何を100%しているかというと、「歯磨き」はほぼ100%であろう。まったく歯磨きしていない人はいないと思う。排便後の陰部の洗浄・拭き取りも100%であろう。どうして、これらの行為は100%実施されるのであろうか? それは、実施しないと気持ちが悪くなるからである。しかし、手洗いはしなくても気持ち悪くはならない。そこが問題である。これは催眠術師と結託して、医療従事者に「手洗いしないと気持ちが悪くなる!」という暗示を与えるのがよいかもしれない。感染対策を20年もやって、手洗いの啓発がほとんど進んでいないと、このような支離滅裂なことを思いついてしまうのはやむをえないことであろうか?

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