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患者申出療養制度  【保険適用につなげることが目的だが,開始までの期間,費用など,ハードルは高い】

No.4807 (2016年06月11日発行) P.54

永井将弘 (愛媛大学臨床研究支援センター特任教授)

登録日: 2016-06-11

最終更新日: 2016-10-26

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患者申出療養は2016年4月に施行された,未承認薬等を保険外併用療養として使用するための新しい制度である。保険外併用療養費制度は,混合診療が認められていないわが国の医療制度の中で,例外的に保険診療との併用が認められてきた制度であり,治験や先進医療等が含まれている。先進医療,患者申出療養とも先進的な医療の実施を目的としているが,先進医療の起点が医療機関であるのに対して,患者申出療養は患者からの申出を起点とし,身近な医療機関において実施できることが主たる相違点である。
患者申出療養は将来的に保険適用につなげるための科学的根拠を集積することを目的としており,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づいて臨床研究として実施しなければならない。同制度の対象となる医薬品,医療機器は保険収載を前提に,一定の安全性・有効性が確認されたものとなり,ある程度の科学的根拠がない医療は対象とならない。
申出は臨床研究中核病院の意見書(臨床研究計画書,倫理審査委員会の審議内容等),そのほか必要な書類を添えて患者が国に行うこととされている。国による審議,承認を得た後に開始となり,臨床研究中核病院を通じて国に書類を提出してから,実施が認められるまでの期間は原則6週間となっている。しかし,臨床研究中核病院での準備期間を含めると,実際には半年以上の期間が必要とされる。また,未承認薬の費用など,保険適用されていない部分については患者の自己負担となり,実施のためのハードルは高い。

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