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心房細動のアブレーションと薬物療法の使いわけ

No.4738 (2015年02月14日発行) P.62

合屋雅彦 (東京医科歯科大学医学部循環制御内科学講師)

登録日: 2015-02-14

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

心房細動に対するアブレーションは近年,症例数が増え,18年前のHaissaguerreらの発表時より成功率が改善し,以前は適応外であった慢性心房細動にも稀ならず行われます。
一方,薬物療法単独でも,新規抗凝固薬の登場により,既存のビタミンK拮抗薬と比較して明らかにイベントが抑制できることが知られるようになってきました。慢性心房細動のどのような症例にアブレーションの効果が期待でき,どのような症例は薬物療法で十分と判断すべきでしょうか。日本でも有数の経験を有する東京医科歯科大学・合屋雅彦先生のご教示をお願いします。
【質問者】
有田武史:九州大学病院ハートセンター

【A】

カテーテルアブレーションは1990年代以降,各種不整脈に対し目覚ましい発展を遂げ,2013年の国内のアブレーション件数は約4万6000例に達しています。うち心房細動アブレーションは約2万7000例で,アブレーション施行症例数は著明に増加しています。ただし,わが国および海外のガイドラインでClassⅠ適応とされているのは器質的心疾患のない(あっても軽度)薬物治療抵抗性,症候性の発作性心房細動です。このような発作性心房細動には85%を超える成功率が期待できますので,積極的にアブレーションを行うことが患者さんのメリットになると思います。
しかしながら,持続型心房細動,中でも持続時間が1年を超える長期持続型心房細動(一般にいう慢性心房細動)はいまだに“手ごわい”のが現状です。発作性心房細動のアブレーションは主に心房細動の引き金となる心房性期外収縮を標的とした肺静脈の電気的隔離アブレーションを行えばよいのですが,慢性心房細動の場合は“心房細動の引き金”だけでなく“心房細動の維持”に関与する心房筋を標的とする必要があります。そのため肺静脈隔離だけでなく,両心房の線状アブレーションやCFAE(complex fractionated atrial electrogram)と言われる連続電位の焼灼が一般的であり,手技が複雑化します。また,近年では心房細動の興奮旋回の中心となるrotorを標的とするアブレーションも試みられていますが,まだまだ成績は不十分です。
では,慢性心房細動症例のアブレーションの適応をどのように考えればよいのでしょうか。以下に私見を述べさせていただきます。
いまだ議論がありますが,AFFIRM研究を代表とする以前の研究からは心拍数コントロールとリズムコントロールで生命予後は変わらないとされています。このことから,70歳を超える(AFFIRM研究の平均年齢69歳)慢性心房細動症例では,抗凝固薬を含めた薬物治療が第一選択でしょう。一方,60歳以下の器質的心疾患のない慢性心房細動の場合は,アブレーションにより洞調律化できることが多く(約60%で抗不整脈薬なし)経験されます。アブレーションが長期予後の改善につながる可能性が高いので,積極的にアブレーションを行うのがよいと考えられます。60代の場合は症例ごとに心エコーでの左房の拡大の程度,症状の有無などにより慎重な検討が必要でしょう。
心不全合併症例や,弁膜症,心筋症(拡張型,肥大型)などの基礎心疾患がある慢性心房細動の場合は,さらに治療法の選択が難しくなります。このような症例は器質的心疾患のない慢性心房細動症例に比して,明らかにアブレーションの成功率が落ちます。しかし,そのような症例ほど洞調律化できた場合のメリットが大きいことも事実です。やはり症例ごとに抗凝固薬を含めた薬物治療がよいのか,アブレーションを試みるべきかを慎重に検討し選択するしかないと思います。

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