株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

左心不全の肺高血圧症に対する 肺血管拡張薬の使用法

No.4716 (2014年09月13日発行) P.54

福本義弘 (久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門主任教授)

登録日: 2014-09-13

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

様々な肺血管拡張薬が登場し,肺高血圧症の治療にも幅が出てくるようになりました。一方,左心不全に伴う肺高血圧症はあくまで左心不全の治療が第一選択ですが,最適治療を行っても左心不全の状況に釣り合わない肺高血圧が残存する場合,肺血管拡張薬はどのように活用すべきでしょうか。肺血管抵抗の減少に伴い左室の前負荷が増し,むしろ肺うっ血を助長する危惧がありますが,いかがでしょうか。久留米大学・福本義弘先生のご教示をお願いします。
【質問者】
猪又孝元:北里大学医学部循環器内科学講師

【A】

左心不全に伴う肺高血圧症は,肺高血圧症の中で最も頻度が高いとされており,駆出率の低下した心不全,保持された心不全,弁膜症のいずれも肺高血圧症をきたします。肺高血圧症の合併は左心不全患者の予後不良因子であり,何らかの治療介入が必要です。
さらにこの病態には,上昇した左房圧,肺静脈圧の肺動脈への受動的伝播により生じる受動性後毛細血管性肺高血圧症と,それら圧の上昇に肺動脈リモデリングを生じ,さらなる肺動脈圧の上昇をきたす反応性後毛細血管性肺高血圧症の2種類があります。
別の考え方をしますと,反応性肺高血圧症は受動性肺高血圧症に肺動脈性肺高血圧症の要素が加わった状態であるとも言えます。さらに,受動性肺高血圧症に比べ,反応性肺高血圧症のほうが予後不良であることも明らかとなっており,特に反応性肺高血圧症への治療介入の必要性が示唆されています。ご質問はこの反応性肺高血圧症に対する治療法に関するものになります。
現在,肺動脈性肺高血圧症に対する治療薬としては,プロスタグランジン製剤,エンドセリン受容体拮抗薬,ホスホジエステラーゼ5阻害薬の3種類があり,慢性血栓塞栓性肺高血圧症に適応のある可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬が,いずれ肺動脈性肺高血圧症に対しても認可される予定です。
プロスタグランジン製剤およびエンドセリン受容体拮抗薬は,反応性肺高血圧症に対しては有効ではないとされていますが,ホスホジエステラーゼ5阻害薬は有効である可能性が残されています。
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬は,左心不全に伴う肺高血圧症全体(受動性肺高血圧症および反応性肺高血圧症の両方を対象)に対しては,その有効性が示されませんでしたが,反応性肺高血圧症に限った臨床試験はまだ行われておらず,有効である可能性が残されています。
ご質問にありますように,いずれの肺血管拡張薬も肺うっ血を増悪させる危険性があり,肺血管拡張薬を使用する場合は,少量から漸増しながら注意して使用すべきと考えます。
そのほかピモベンダンは,Ca2+感受性増強作用およびホスホジエステラーゼ3阻害作用を有していることから強心作用も有していますが,肺血管に対してはホスホジエステラーゼ3阻害作用による肺血管拡張作用を有し,左心不全に伴う肺高血圧症に有効である可能性があります。ただし,他のホスホジエステラーゼ3阻害薬の検討ですが,慢性心不全に対する長期予後改善効果は示されていませんので,今後のさらなる検討が必要と考えます。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top