株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

高齢のCKD患者における血圧管理目標

No.4700 (2014年05月24日発行) P.60

今井圓裕 (中山寺いまいクリニック院長)

登録日: 2014-05-24

最終更新日: 2016-11-08

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

慢性腎臓病(CKD)患者の多くは高齢者で糸球体濾過量(GFR)は軽~中等度低下ですが(G3aまたはG3b),蛋白尿は<0.5g/gCrで正常(A1)か軽度(A2)です。「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」には,血圧値について,糖尿病合併CKD患者では「すべてのA区分において,130/80mmHg未満を推奨」,糖尿病非合併CKD患者では「すべてのA区分において,140/90mmHg未満に維持するよう推奨」,「A2,A3区分では,より低値の130/80mmHg未満をめざすことを推奨」,ただ高齢CKD患者では「過剰な降圧は生命予後を悪化させるため,避けるべき」とあります。
特に高齢CKD患者では起床時に収縮期血圧140~160mmHgでも,昼や就寝時には110~120 mmHg未満と,日内変動が大きな症例が少なくありません。私は高齢者のCKDは早朝高血圧があっても,収縮期血圧110mmHg未満の低血圧を避け,立ちくらみに注意して降圧しているので,ガイドラインを遵守できない症例が多くなります。中山寺いまいクリニック・KDIGO Board Memberの今井圓裕先生はCKD患者の血圧管理目標をいかに達成されていますか。
【質問者】
安田宜成:名古屋大学大学院医学系研究科循環器・腎臓・糖尿病(CKD)先進診療システム学寄附講座准教授

【A】

高齢者の血圧管理をどのようにするかに関して,現在十分なエビデンスがあるとは言えません。高血圧治療に関するガイドライン間でも,高齢CKD患者の降圧目標は異なっています。KDIGOの血圧管理のガイドラインでは,「年齢,合併症,および降圧薬以外の治療を考慮して,患者1人1人に合った診療を行う」として,降圧目標値を示していません。表1は,高齢CKD患者の降圧目標を示したものです。
高齢者であることと,CKD患者であることのいずれのカテゴリーを重視するかはガイドラインによって異なっています。最近のガイドラインでは高齢者に関する項目を別に設けているものもあります。
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」(以下,「CKD診療ガイドライン2013」)は高齢者の項目があります。その解説には,日本人の成績であるJATOS研究のサブ解析を引用し,CKD患者は収縮期血圧160mmHg以下の降圧で腎機能低下が抑制されることから,成人CKD患者より少し高い降圧目標でもよいのではないかという可能性が記載されています。また,高齢者の血圧研究であるHYVET研究でも150/80mmHg未満の血圧管理を支持しています。
そして,「CKD診療ガイドライン2013」のステートメントでは,高齢者の降圧目標140/90mmHg未満をグレードC1(エビデンスは十分ではないが行ってもよい)として推奨しています。また,糖尿病や尿蛋白がある高齢者には腎機能の悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認しながら,130/80mmHg未満をめざして緩徐に降圧することを同じくC1として推奨しています。
過剰降圧に関しては,「CKD診療ガイドライン2013」のステートメントには「過剰な降圧は生命予後を悪化させるため,避けるべきである」とのみ記載されており,具体的な数値は記載されていません。
平均68歳のCKD患者の血圧管理に関する研究,あるいは平均66歳の糖尿病患者に関するINVEST研究のサブ解析では,収縮期血圧110mmHg未満で死亡のリスクが上昇すると報告されています。またINVEST研究の高齢者のメタ解析では,最も死亡率が低い収縮期血圧は70歳代で135mmHg,80歳以上で140mmHgです。
これらの論文のエビデンスレベルは高くありませんが,死亡するリスクが高くなる収縮期血圧110 mmHgを目標としたランダム化比較試験(RCT)は倫理的に行われる可能性がなく,このデータは重視するべきでしょう。「CKD診療ガイド2012」では,「原則として収縮期血圧110mmHg未満への過剰降圧がみられる場合には,当該の降圧薬を減量あるいは中止して経過を観察する」としています。
私は高齢CKD患者では,75歳以上の人と,65~74歳までの人をわけて考えます。65~74歳のCKD患者には130/80mmHgを,75歳以上の高齢CKD患者には140/90mmHgをめざした降圧療法を行います。これは,130/80mmHg未満(収縮期血圧120mmHg台をめざす),140/90mmHg未満(収縮期血圧130mmHg台をめざす)ではありません。また,測定時間にかかわらず降圧薬によって収縮期血圧110mmHg未満になった場合には,降圧薬を減量,中止しています。先生のように,来院時に立ちくらみがないかどうかを確認することや,血清クレアチニン値で腎機能をモニタリングすることも必須であると思います。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top