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スモールワールド [プラタナス]

No.4797 (2016年04月02日発行) P.3

瓜田純久 (東邦大学医学部総合診療・救急医学講座教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • 高所恐怖症の私はジェットコースターが大の苦手であった。同級生であった女房と行った開園間もないディズニーランドでも、ドキドキ系のアトラクションは避け、世界融和をテーマにした“It’s a Small World”に何度も繰り返し入場したものであった。

    その日、初診外来を終えた私は、午後4時から回診に向かった。ある部屋に入ると、老いた母親が目を閉じた患者の手を握り、頻りに声をかけていた。担当医のプレゼンでは、心療内科に通院中の方が自宅で強直性痙攣を起こして救急搬送されたとのことであった。画像診断、血液・髄液検査で異常はなく、脳波でもてんかん波形はみられず、薬物反応も陰性。痙攣発作時、ジアゼパムを静注しても、まったく反応がみられなかった。

    「先生、助けて下さい。この子の娘はまだ中学生だ。お願いします!」。1週間経っても変化のない病状に母親は語気を強め、脇にいる中学生の娘さんも、無言のまま眼力で精一杯訴えてきた。「すみません。いろんな検査で原因を調べてもわかりませんでしたが、明日から新たな治療を開始してみます」と、自信なさげに私は答えていた。

    症候から推測すると、責任病巣は脳神経系であるが、神経内科、精神科、通院していた心療内科ともに、「診断がつかないので総合診療科で治療してくれ」と申し合わせたように言う。

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