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医師ではない親族が医療法人の理事長を務めることの可否

No.4739 (2015年02月21日発行) P.69

堀 克巳 (駅前通り法律事務所 弁護士)

登録日: 2015-02-21

最終更新日: 2016-10-26

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【Q】

医療法人の理事長が,次のような理由で1年間不在となる場合,雇用した院長とは別に医師でない親族を理事長とすることは可能か。
(1)両親の介護のため離れた田舎に居住する
(2)医学上の留学で海外に1年間居住する
(3)医学以外(語学留学やロングステイなど)で海外に1年間居住する (埼玉県 K)

【A】

医療法第46条の3第1項では,原則として理事長は医師または歯科医師である理事のうちから選出することとし,例外として,都道府県知事の認可を受けた場合は,医師または歯科医師でない理事のうちから選出することができるとされている。
この但書の非医師を理事長とする場合で,親族が理事長となる要件について,厚生労働省は,昭和61(1986)年に「理事長が死亡し,又は重度の傷病により理事長の職務を継続することが不可能となった際に,その子女が,医科又は歯科大学(医学部又は歯学部)在学中か,又は卒業後,臨床研修その他の研修を終えるまでの間,医師又は歯科医師でない配偶者等が理事長に就任しようとするような場合」には認可がなされるよう,都道府県知事宛てに通知している。
この認可要件のみを適用する場合,質問の[1]~[3]のいずれも適用外となり,質問のように1年間,非医師の親族が理事長を務めることは認可されないであろう。しかし,医療法人が(1)特定医療法人または社会医療法人,(2)地域医療支援病院を経営している医療法人,(3)特定機能評価を受けた医療機関を経営している医療法人の場合,または,これらの医療法人に該当しない場合であっても,(4)理事長候補者の経歴,理事会構成等を総合的に勘案し,適正かつ安定的な法人運営を損なう恐れがないと都道府県知事が認めた医療法人については,非医師が理事長に就任することの認可がなされることとなっている。そして,2014年,厚生労働省から,(4)の要件について,医療審議会の意見を聞いて,適正に対応するよう通知し,非医師による理事長就任を柔軟に運用する方向が示された。
質問の場合も,この(4)の要件を満たすことにより,非医師の親族が理事長となることの認可がなされる余地もあるので,都道府県担当者等と相談してほしい。なお,質問の[1]および[3]の場合について,先例はないものの,雇用した院長が病院の管理者(理事)となり,現場統括はなされるので,理事長が病院に常駐していなくても,[1]の場合はその可能性があり,[2][3]の場合は副理事長を置くなどして,法人運営に支障がなければ,現状のまま理事長を務めながら対応できる場合もあるので,その観点からも検討してほしい。

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