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日本人集団に適した減塩指導のノウハウ

No.4758 (2015年07月04日発行) P.65

三浦克之 (滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門 教授)

登録日: 2015-07-04

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

2013年から厚生労働省が推進している「健康日本21(第二次)」では,国民の収縮期血圧の平均を4mmHg低下させることによって脳・心血管疾患の年齢調整死亡率を低下させるという目標が盛り込まれています。またこの4mmHgの低下をもたらす生活習慣などとして,減塩,野菜・果物の摂取,肥満者の減少,身体活動量(歩数)の増加,節酒,降圧薬服用率の上昇が提示されています。特に減塩による効果は2mmHgの血圧低下であり,これだけで目標の半分を占めています。しかし,高血圧者に対しても,非高血圧者に対しても,実際に減塩を進めていくのは容易ではないと思います。日本人集団に対する有効な減塩指導のノウハウについて,滋賀医科大学・三浦克之先生のご教示をお願いします。
【質問者】
岡村智教:慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教授

【A】

「健康日本21」で目標とされているように,国民全体(高血圧者・非高血圧者を含む)の減塩により,国民の平均血圧低下をめざすポピュレーション戦略はきわめて重要です。
平成24(2012)年国民健康・栄養調査によると,成人の食塩摂取量は平均10.4g(男性11.3g,女性9.6g)でした。国際共同研究INTERMAPで私たちが明らかにした日本人の食塩摂取源は,醤油20%,漬物10%,味噌汁9%,魚(塩干魚含む)9%,調味料としての食塩9%,汁・つゆ7%などとなっており,上位6食品で全体の60%以上を占めています(文献1)。醤油,味噌も加工食品に含めると,加工食品から約90%の食塩が摂取されています。
このように,日本人には日本独特の伝統的食習慣による食塩摂取源がある一方,欧米的食習慣の流入,加工食品や外食・惣菜の増加などによる新たな食塩摂取源が出現しています。
個人が効果的に食塩摂取量を減らすためには,高塩食品の摂取を減らすとともに,調味料などを低塩のものに置き換える必要があります。私たちは効果的な減塩手法として8つの食行動「減塩のコツ」を示しています(文献2)。すなわち,(1)漬物は控える,(2)めん類の汁は残す,(3)新鮮な食材を用いる,(4)具だくさんの味噌汁にする,(5)むやみに調味料を使わない,(6)低塩の調味料を使う,(7)香辛料・香味野菜や果物の酸味を利用する,(8)外食や加工食品を控える,であり,わかりやすい食行動の実践によって効果的な減塩が可能です。
腎機能の正常な人では,一部の塩化ナトリウムを塩化カリウム(カリウム塩)に置き換えた食塩の活用も1つの方法です。
以上のような食品に関する正しい知識や実践しやすい技術を,国民に周知する必要があります。
一方,加工食品や外食が増加する中,個人の努力による減塩には限界があり,環境改善によるポピュレーション戦略がますます重要になってきています(文献3) 。減塩のためのポピュレーション戦略として次のような方法があります。
第一に一般国民への普及啓発であり,マスメディアが重要な役割を果たします。
第二に食品製造業者に対し加工食品の減塩を促すことです。加工食品中の食塩含有量表示の義務づけも重要で,欧米に比べわが国は遅れています。さらに食塩含有量制限の法的措置・行政指導も検討する必要があり,既に欧米では始まっています。
第三にレストランなどの外食産業,学校・職場の給食における調理の減塩促進,メニューの塩分量の表示なども必要です。
第四にすべての保健・医療専門家が保健・医療の現場において,適正体重・身体活動・禁煙の指導と同様,すべての人を対象に減塩の指導を行うことが必要です。
減塩のための様々な取り組みについては,日本高血圧学会(減塩委員会)ホームページもご参照下さい。また,本回答につきましてはNo.4755,p18に詳述しておりますので,併せてご参照下さい。

【文献】


1) Anderson CA, et al:J Am Diet Assoc. 2010;110 (5):736-45.
2) 岡山 明, 他:健康教育マニュアル. 日本家族計画協会, 2014.
3) 日本高血圧学会減塩委員会, 編:日本高血圧学会 減塩委員会報告2012. 日本高血圧学会, 2012.

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