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【文献 pick up】デバイス検出心房高頻拍エピソード例へのDOAC開始は脳卒中・TIA既往例に限っても有用性認めず:RCT事前設定追加解析/JAHA誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-09-12

最終更新日: 2024-09-11

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心房細動(AF)診断歴がない例では、たとえ脳卒中既往例であっても、植え込み式デバイスを用いた心房高頻拍エピソード(AHRE)検出後の抗凝固療法開始は、心血管系(CV)転帰を改善しないようだ。昨年報告されたランダム化比較試験(RCT"NOAH-AFNET 6"(結果はネガティブ)の事前設定追加解析としてHans Christoph Diener氏らが8月27日、Journal of the American Heart Association誌で報告した。

【対象】

NOAH-AFNET 6試験の対象は、65歳以上でAF診断歴はないものの、AHRE(6分間以上持続)が検出され、さらに脳梗塞リスク因子を有する2536例である。うち253例に脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA)の既往があった。これら253例の平均年齢は78歳、35%強を女性が占めた。CHA2DS2-VAScスコア中央値は「6.0」である。

【方法】

今回はこれら脳卒中・TIA既往のある253例に限り、「CV死亡・脳梗塞・塞栓症」(有効性)リスクと「ISTH大出血・死亡」(安全性)リスクを、DOAC群(エドキサバン60mg/日。減量基準あり)にランダム化された122例とプラセボ群(±アスピリン)ランダム化131例で比較した。観察期間は、NOAH-AFNET 6試験全体で21カ月(中央値)である。

【結果】

・有効性

その結果、「CV死亡・脳梗塞・塞栓症」の発生率は、DOAC群/プラセボ群間に有意差を認めなかった(DOAC群:5.7%/年[95%CI3.4-9.6%]、プラセボ群:6.3%/年[95%CI3.9-10.3%]。

・安全性

一方、「大出血・死亡」は、有意差とはならないものの、DOAC群で著明な増加傾向が認められた(DOAC群発生率:9.7%/年[95%CI6.5-14.4%]、プラセボ群:5.8%/年[95%CI3.5-9.6%]。

【考察】

Diener氏らはこの結果から、脳卒中・TIA既往を有する高リスク例でも、デバイスで検出したAFに対する抗凝固療法は、考えられていたほどの効果はなく、逆に出血を増やすのではないか、と考察している。

なお積極的AF探索に基づく抗凝固薬開始の有用性は、欧州心臓病学会(ESC)で報告されたGUARD-AF試験でも確認されなかった。

NOAH-AFNET 6試験はドイツ連邦教育研究省、Daiichi Sankyo Europeなどから資金提供を受けた。

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