Symplicity HTN-1試験が治療抵抗性高血圧に対する経カテーテル的腎動脈焼灼(腎デナベーション[RDN])による降圧を報告してから15年がたった。しかしRDNの降圧作用持続性や臨床転帰への影響は必ずしもまだ明らかではない。
8月30日からロンドン(英国)で開催された欧州心臓病学会(ESC)学術集会では、小規模ではあるが心房細動(AF)高リスク例に対するRDNのAF発症抑制作用を検討した、ランダム化比較試験(RCT)“RD-PAF”の6年観察結果が報告された。RDNによる降圧作用、AF抑制作用はいずれも、観察終了時まで持続していた。報告者はMarshall Heradien氏(ネットケア・クイス・リバー病院、南アフリカ)である。
RD-PAF試験の対象は、「降圧薬3剤併用で血圧管理不良」かつ「AF発症高リスク」(左室肥大、左房拡大)の80例である。RDN(腎動脈焼灼術)群と偽手技群にランダム化され観察された。観察期間中のクロスオーバーはない。平均年齢は66歳、男性が74%を占めた。降圧薬服用数の平均は4剤で、診察室収縮期血圧(SBP)平均値は148mmHgだった。また28%にAF診断歴があった。
今回報告されたのはこれら80例の「AF検出」(RD-PAF試験の1次評価項目)と「降圧」、さらに「死亡」についての6年追跡データである。脱落例はいない。AF検出に用いたデバイスは当初3年間が植え込み型ループレコーダー、その後は6カ月おきの(ホルター)心電計が用いられた。血圧は6カ月ごとに診察室血圧と24時間自由行動下血圧を評価した。「死亡」の有無は公的記録で確認し、死因は主治医に照会した。
・AF検出率
その結果、6年間経過後もAF検出率はRDN群で有意に低かった(16.7% vs. 42.1%)。RDN群におけるオッズ比(OR)は0.28(95%CI:0.1-0.78)である。
・降圧作用
同様に「RDN」群では6年後の診察室SBPだけでなく、24時間平均SBPも「偽手技」群に比べ有意な低値が維持されていた。群間差は順に14.4mmHgと12.8mmHgである。ちなみに服用降圧薬の数も「RDN」群では19%低下していた(「偽手技」群では12%増加)。
・死亡率
さらに「RDN」群では「死亡」率も、「偽手技」群に比べ有意に減少していた(10% vs. 32%)。ORは0.23(95%CI:0.07-0.79)だった。両群のカプランマイヤー曲線の差は、観察終了時まで拡大し続けていた。ただし心血管系死亡は、心筋梗塞死の4例(全死亡の11%)だけである(全例「偽手技」群)。最大死因は「敗血症」の7例(RDN群:5例、偽手技群:2例)、次いで「COVID-19」の4例(3例 vs. 1例)だった。
「RDN」群で死亡率が低かった理由につきHeradien氏は、「SBPの著明低下」や「AF発症抑制」が作用した可能性を挙げながらも「基本的には不明」とし、より大規模な研究による確認が必要だと結んだ。
RD-PAF試験のスポンサーはPace Clinic、今回の延長観察はMedtronic社のサポートを受けた。