SUMMARY
オンライン診療は,効率化のためのツールとして強調されるが,プライマリ・ケアの現場では,新たに加わったコミュニケーションの手段として理解したい。正しく用いることで,信頼関係をより強固にすることができる。
KEYWORD
第4の診療形態
オンライン診療は,従来の外来・入院・在宅に新たに加わった重要な診療形態として位置づけられている。かかりつけ医が安全性・信頼性を担保して,対面診療と適切に組み合わせることによって,診療の幅を広げることができる。
PROFILE
2000年獨協医科大学卒業。武蔵野赤十字病院で初期研修の後,筑波大学附属病院総合診療科,亀田総合病院家庭医診療科で研修。川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年多摩ファミリークリニックを開業。東京医科歯科大学臨床教授。
POLICY・座右の銘
優しいヤブ医者にはなるな
オンライン診療は,診療を効率化するためのツールというイメージが強い。もちろんそれは利点のひとつであるが,「オンライン診療ですぐに処方」という,コミュニケーションを省略する手段として用いられるのは,安全性,信頼性を考えると問題が多い。
むしろ筆者は,主治医と患者や家族のコミュニケーションをより強固にするための「第4の診療形態」であると考えている(図1)。何らかの事情で通院が困難となった際も,オンライン診療であれば受診が可能となり,薬局でOTC医薬品を購入するには不安があるものの,わざわざ対面受診をするほどの症状ではないときも,気軽にオンライン診療を受けることで安心が提供される。プライマリ・ケアにおいて,オンライン診療は,かかりつけ医と患者や家族との信頼関係をより強固にするための重要なツールとなりうる。
オンライン診療はかかりつけ医が適切に用いることで,これまで以上に診療の幅を拡げ,患者や家族とより強固な信頼関係を築くことが可能となる。本稿では,特徴的な3つの事例を通して,オンライン診療ならではの利点や魅力について考えてみたい。