サルコペニア・廃用症候群ともリハビリテーション(リハ),栄養管理の両面からアプローチする「リハ栄養」の考え方が有用である。リハ栄養とは,国際生活機能分類(ICF)による全人的評価,栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因の評価,診断,ゴール設定を行った上で,障害者やフレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレイルを改善し,生活機能(心身機能・活動・参加)やQOLを最大限高める「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である。低栄養で生活機能が低下している場合には,栄養改善が治療となる。
質の高いリハ栄養の実践には,5つのステップで構成されるリハ栄養ケアプロセスの実施が有用である。
①リハ栄養アセスメント・診断推論:ICFによる全人的評価,栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の評価および診断推論
②リハ栄養診断:栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の有無と原因追究
③リハ栄養ゴール設定:仮説思考を元にしたリハや栄養管理のSMART(specific,measurable,achievable,relevant,time-bound)なゴール設定
④リハ栄養介入:「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」の計画・実施
⑤リハ栄養モニタリング:リハ栄養の視点での栄養状態やICF,QOLの評価
サルコペニア・廃用症候群とも,運動面ではレジスタンストレーニングと蛋白質(分岐鎖アミノ酸)摂取の併用が効果的である。ただし,低栄養でエネルギー摂取が不足している場合には筋肉量増加を見込めないため,軽負荷のレジスタンストレーニングのみ行う。在宅では,離床時間を増やすこと,外出機会を増やすことが,サルコペニア・廃用症候群の予防に重要である。外出機会は,デイケア・デイサービスやヘルパーとの買い物などでもよい。外出が難しい場合には,家庭内で役割をつくり,自宅での活動機会を増やす。
医原性のサルコペニア・廃用症候群を生じさせないことである。
理学療法士による機能訓練を優先しがちであるが,管理栄養士による栄養評価,栄養指導を同時に行うとよい。また,サルコペニア・廃用症候群に改善の余地があるかないかを,多職種で検討するとよい。改善の余地があると判断した場合には,積極的なレジスタンストレーニングと栄養改善をめざした栄養療法を行う。改善の余地がないと判断した場合は,機能維持や機能悪化の軽減をめざした維持的な理学療法と栄養療法を行う。
若林秀隆(東京女子医科大学病院リハビリテーション科教授)