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【識者の眼】「非感染性・慢性疾患の疫学者が語る『ワクチンの副反応としての死亡』のみかた」鈴木貞夫

No.5163 (2023年04月08日発行) P.55

鈴木貞夫 (名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)

登録日: 2023-03-29

最終更新日: 2023-03-29

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今、週刊誌や一部民放でワクチン接種と超過死亡との関連が大きく報じられている。例えば週刊現代は、記事「政府がひた隠す事実【コロナワクチンと超過死亡の因果関係】」の中で、3、4回目接種が増えた2〜4月と8〜9月に、超過死亡もなぞるように増えていることを理由に、両者の関連性を示唆している1)。テレビでは、ワクチン接種後に亡くなった若年者家族のコメントを流し、因果関係を不明とする厚生労働省に批判的である。このような風潮を反映してか、「再開の市民マラソン、ランナーの心肺停止相次ぐ」のように、死亡があったとか、若い人が予期せず亡くなったとかの、ワクチンとの関連を特に想定していない記事2)でも、コメント欄はワクチンへの言及がほとんどだ。

こういう話は「因果関係」が重要なのに、予期しない死亡があると反射的にワクチンの話になってしまっている。疫学的には因果関係の検討のために使われるのが、相対危険度と呼ばれるもので、例えば、肺がん発生を、喫煙・非喫煙の群ごとに出して、その比を取ったものである。発生を割合(確率)でとればリスク比、オッズでとればオッズ比だが、総称として相対危険度と言っている。

これまでに薬害の認定を受けているものの症状についての相対危険度は非常に高く、サリドマイドやSMONなど、軒並み3〜4ケタの数値だ。これは裏を返すと、薬害には薬害に特異的な症状があるということにほかならない。例えば、サリドマイド剤なしでサリドマイド児が生まれることは「ない」と言ってよいレベルだ。突然死、予期せぬ死亡などの原因をワクチンに求めるのであれば、非接種者からのこうした死亡は、非常に少ないはずだ。上記ランナーの心肺停止の記事については、もともとの割合を大きく超えて増加しているのかの検証をまず行うべきである。

厚労省の発表に先立ち、北九州市、仙台市など多くの都市で2023年1月の死亡数が発表されている。ほとんどの都市でこれまでの最大死亡数を記録し、昨年12月と比べても激増している3)。全国的な死亡の激増は確実にも思えるが、これについて、ワクチンの影響の調査を求める声が出ている。もちろん、原因究明は重要だが、1月のワクチン接種は、12月に比べ激減していることをきちんと認識したほうがよいとは思う。少なくとも、ワクチン接種に合わせて、死亡が増えていたと言っていた人は、この動向をきちんと説明すべきだろう。

【文献】

1)「週刊現代」2023年2月11・18日合併号より.
https://gendai.media/articles/-/105932

2)読売新聞記事:再開の市民マラソン、ランナーの心肺停止相次ぐ.(2023年2月25日)
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20230225-OYT1T50208/

3)Total News World 記事:1月速報値、北九州市の死者数が『ドえらい』ことに!(2023年2月10日)
http://totalnewsjp.com/2023/02/10/covid19-795/

鈴木貞夫(名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授)[予期しない死亡][相対危険度]

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