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皮下出血のある外傷後 ×(桂枝茯苓丸+治打撲一方)[漢方スッキリ方程式(69)]

No.5146 (2022年12月10日発行) P.14

松平 浩 (東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター特任教授)

登録日: 2022-12-08

最終更新日: 2022-12-08

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疼痛・腫脹を伴う外傷後の治療において,腎機能への影響なども考慮しNSAIDsを処方しにくい場合もある。そのような場合,特に皮下出血を認める症例では桂枝茯苓丸を,軟部組織の問題のみならず,骨折および骨挫傷(骨痛)が併発している際には治打撲一方との併用をおすすめしたい。

軟部組織の微小循環障害改善を目的に桂枝茯苓丸を使用し,圧痛・介達痛・叩打痛により,影響が骨にまで達していると判断できる場合は,桂枝茯苓丸と治打撲一方を併用することで,症候の速やかな改善が得られ,早期リハビリテーションにつなげられる印象を持っている。

●桂枝茯苓丸について

微小循環血流の改善作用が確認されており,のぼせ・ほてりなどの血管運動神経障害を中心とした更年期障害に頻用されている漢方薬であるが,打撲症の保険適応も有しており,打撲・外傷後の軟部組織の腫脹の早期改善が期待できる。

副作用の発症に注意すべき麻黄,甘草,大黄,附子などの生薬を含んでおらず,腎機能への影響も比較的少ないということもあり,NSAIDsが処方しにくいeGFR低下症例に対しても安心して使用できる。

●治打撲一方について

読んで字のごとく打撲・捻挫による腫れや痛みに広く用いられる漢方薬で,打撲によらない急性期の筋肉,関節(運動器)の痛みにも効果を示す場合がある。戦国時代の軍医たちが考案,経験して秘伝として伝えられたものとされている。

これまで経験したことはないが,甘草に起因する偽アルドステロン症,大黄による下痢には注意が必要。桂枝茯苓丸と同じく腎機能への影響も比較的少ないということもあり,NSAIDsが処方しにくい症例,特に高齢者に対して比較的安心して使用でき,骨粗鬆症性椎体骨折後等にも重宝する場合がある。

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