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口笛を鳴らしたい[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(381)]

No.5092 (2021年11月27日発行) P.66

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-11-24

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歌舞伎座で、片岡仁左衛門丈が孫の千之助君と演ずる連獅子を観た。ラストはご存じ「毛回し」、長い毛を振り回し続けるところでは、最初から最後まで拍手が鳴り続いた。

ハードな芸だが、とても喜寿とは思えない大熱演で、息を詰めて見入ってしまった。体の動きやキレは21歳の孫が勝っているように見えるが、円熟の芸というのは、それをはるかに凌駕する素晴らしさだった。

というような歳の取り方をできたらいいのだが、こちとらは馬齢を重ねているだけのような気がしてしかたがない。それに、このエッセイでもしょっちゅうぼやいているように、老化がどんどん進んできている。

いちばん気になるのは忘れっぽくなってきていることだ。特に固有名詞。周辺状況はやたらと詳しく思い出せるのに、肝心の名前が思い出せないことが多い。でもきっと、この問題は、周辺状況すら思い出せなくなって、遠からず解決していくのではないかと期待している。それって全然あかんけど。

毎日1万歩とか、ときどき片道15キロほどの自転車通勤とかのおかげか、体力的には予想していたほどの衰えはないように感じている。ただ、あくまでも主観的にそうなだけで、そのうち転んで大けがでもするのではないかという一抹の不安は常にある。

若い頃から強度の近視で、虫歯が多い。なので、このふたつがどうなるかは昔からずいぶんと気にしていた。が、幸いなことに、いずれもあまり悪くなってはいないように思う。元々のレベルが低いから、少々悪くなっても気にならないだけかもしれない。

そういえば、最近物忘れがひどくなったと嘆いていたら、妻は、私は気にならないと威張る。何故かと理由を尋ねたら、昔から忘れっぽかったからという無敵の答えが返ってきた。それと同じことですわな、きっと。

ごく最近、まったく予期していなかった老化に気がついた。口笛である。どうにもうまく吹けないのだ。鳴りはするが、音が完全にかすれている。ネット検索してみたら、なんでも口の周りの筋肉の老化によるとのこと。ホンマですか、あかんやん。

べつに口笛を鳴らせなくても困りはしない。何年ぶりかで吹いてみて、音が出ないとわかっただけだし。それに、昔、夜に口笛を吹いたらヘビが出ると祖母によく叱られたことだし。とはいえ、気付いてしまったら気持ちが悪い。なんとかしたいであります。

なかののつぶやき
「口の周りの筋肉を鍛えると、口角が上がって見た目にも若々しくなるらしい。ちょっと疑わしいけれど、やってみましょう。こういう時に、ついグッズを買いたくなるのが悪い癖で、ネットで見つけたのは『吹き戻し』。と言ってもわからないかもしれないけれど、よく夜店で売ってる吹いたら伸びて戻る時にピーヒャラと鳴るやつ、を購入しました。筋トレ用に、負荷が大きくて音の出ないのが売られているのにはちょいと感心」

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