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地域の減塩環境を活用し、高血圧を治療する [プラタナス]

No.4821 (2016年09月17日発行) P.3

日下美穂 (日下医院院長)

登録日: 2016-09-15

最終更新日: 2016-10-06

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  • 私は小さな無床診療所の開業医で、医院に栄養士はいない。しかし、多職種の人たちの協力で地域に作った「減塩の環境」を活用することによって、高血圧やその他の生活習慣病の効率的な栄養指導が可能になり、よりよい高血圧の治療ができるようになった。

    高血圧を予防・治療するにあたって減塩は悲願であり、何十年も前から私たちは診察室では患者さんに減塩指導をしてきたものの一向に進まず、不毛の食事指導を繰り返すことに医師の無力さを痛感していた。1日平均10~11gの高食塩食が「普通の味」の日本人にとって、口で説明しても食べてみなければ分からないからである。しかも、美味しくなければ受け入れられない。

    そこで2008年に、栄養士の助言のもと、町の料理人にレストランで美味しい減塩低カロリー食をメニューの1つに加えてもらい、タウン情報誌で広報し、呉市医師会循環器研究会と日本高血圧学会が後押しするという仕組みを作り、誰でも身近なレストランで美味しい減塩低カロリー食を体験し、味や量を感覚で覚えるレッスンができるようにした。現在、約50店の参加がある。

    患者は、当時81歳の活発な女性。しかし、既に頸動脈のプラークが著明な本態性高血圧患者で、降圧薬3剤を投与していたが血圧は150~160/90mmHg程度。近所のレストランに減塩低カロリーメニューができたのを契機に、まずそれを食べて味を覚え、時々通って味の再チェックをして自分の家庭料理に取り入れるように指導した。血圧はみるみる120/60〜70mmHgに低下し、降圧薬は3剤から2剤に、しかもCa拮抗薬は半量に減量できた(図)。ARB 1剤だけの期間もあった。現在88歳になるが、元気に生活している。降圧薬を加えるよりも効果があり、医療費削減にも繫がる。

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