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『学問への扉』へようこそ![なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(349)]

No.5060 (2021年04月17日発行) P.69

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2021-04-14

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また本を出しました。昨年の春・夏学期に1年生向けに開講したゼミ、『学問への扉、健康と医学について考えよう』の実践記録であります。例によってその宣伝をば。

「学問への扉」は、「高校までの受動的で知識蓄積型の学びから、主体的で創造的な学びへと転換」するために、「レポート添削やプレゼンテーション指導などによって、発信力を高めること」を目指すゼミである。

大阪大学の全新入生が必修なので、2年に一度は受け持たなくてはならない。多くの教授は研究好きだが教育にはあまり熱心でない(←個人の意見です)。だから、このゼミの義務化が教授会で伝えられたときは、かなわんなぁという空気が感じ取れた。

えらそうなことは言えない。じつは私もそう思った。しかし、イヤイヤであろうが、喜んでであろうが、やらねばならぬのである。こういう時にとるべきベストの方策は、ウソでもいいから楽しくやる、しかない。

ちょうどその時、新書の執筆依頼があった。よっしゃぁ、それでいこう! もちろん、その時点では実際に本にできるかどうかなどわからない。けれど、そういう目的があればきっと楽しくゼミができるはずだ。

カリキュラムの関係から、経済学部、工学部、外国語学部の学生が対象だった。20名募集したのに、男8、女6の14名しか集まらず、いきなり下がるテンション。それでも気を取り直し、授業はとても楽しかった。

残念ながら、ずっとZoomでの授業だったが、メリットもあった。教室とちがって、全員の顔を見ながら話すことができるのがいい。なんだかとっても仲良くなった感じがした。録画できるので、本にする際にはとても便利だったし、東京におられる編集者さんにもずっと参加してもらえたし。

ゼミのタイトルのように、テーマは健康と医学である。個人別テーマと4~5名のグループテーマの2本立てでおこなったのだが、グループでのテーマは、できるだけ正解がない倫理的問題をということで、「安楽死と尊厳死」、「脳死と臓器移植」、「出生前診断と人工妊娠中絶」の3つにした。

本は、タイトルにあるように、まずは「考え方」、それから、「書き方と伝え方」を解説し、最後に学生が書いてくれたレポートをいくつか紹介するというスタイルになっている。科学的思考法の実用性がよくわかるようになっとりますので、みなさま、ぜひ!

なかののつぶやき
「わずか3カ月間でしたが、学生がめきめき力をつけていったのには驚きでした。学生たちも手応えがあったようで、ひとりはこの授業を通して、まさに『学問への扉』を開けた気がします、とまで書いてくれて、大感激」

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