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スペイン風邪に教えられる[エッセイ]

No.5047 (2021年01月16日発行) P.65

杉本恒明 (関東中央病院名誉院長)

登録日: 2021-01-17

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コロナ禍が終息する気配はまだない。2020年12月27日付の新聞はわが国での感染者21万9300人、死者3247人と伝えている。終息するとすれば、どのような経過をとるのであろうか。免疫のでき方、病原の変異など、関与する要素は時代によって異なるであろうと思いながら、昔の風邪流行の記録を調べてみる気になった。

丁度、「流行性感冒―スペイン風邪大流行の記録」(内務省衛生局編、平凡社、2008)が目についた。1918(大正7)年秋から1921(大正10)年春にかけて、継続的に3回、流行したときの記録である。わが国では2380万4673人の患者、38万8727人の死者を出したという。スペイン風邪の病因は細菌と思われていた時代のことである。濾過性病原体感染が疑われるようになりはじめた時代だった。

巻末に月別の患者数、死者数の表があったので、推移を図にしてみた。終息はあるとき、突然に起こるようであった。患者数あるいは死者数が半減すると1カ月ないし2カ月後には収まっていく様子がみられた。

自然免疫ができていくためなのか、あるいは病原がこのとき、別の形に変異するのか。減少が始まると、1カ月ないし2カ月後に消滅していくようであった。これは収獲だった。日々の統計数値の推移を注意する張り合いがでてきた。

その昔、悪性感冒の予防・撲滅に取り組んだのは内務省衛生局と警察署であった。駐在所の巡査が頻繁に町の警察本部に電話・電報で連絡をしていた。流行性感冒予防心得が出ている。「どうしてかかるか」、「かからないためには」、「かかったら」、の注意は今日と変わらない。予防注射、マスク、含嗽を奨励している。予防注射は非特異的効果を狙うことになるのであろうが、効果は、さすがに数字の上では否定的である。当時の皆さんの苦労がうかがわれる。後世に貴重な資料を残してくれていたことを感謝したい気持ちになった。

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