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病院建築[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.77

南 敏明 (大阪医科大学病院病院長・麻酔科学教室教授)

登録日: 2021-01-03

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建物は経年劣化しますが、特に病院は、医療技術の進展、医療制度の改定が著しいため、鉄筋コンクリートでも40年程度が耐用年数となっています。すなわち、どんなに立派な病院でも、40年程度を目処に建て替える必要があります。

2027年に迎える大阪医科大学創立100周年記念事業として、病院新本館建築が「超スマート医療を推進する大学病院」を基本方針に掲げスタートしています。私は、建築責任者として、教授在任期間の半分以上を、病院建築に関わっているところです。まず、2016年3月、病院西側に「各手術室の主用途に応じた専門性だけではなく高い汎用性を両立する」コンセプトが盛り込まれた中央手術棟が竣工しました。自画自賛ですが、殊の外、すべてにおいてスムーズに行きました。手術室・廊下の壁は、一般的には白色またはモスグリーンですが、本院では、壁一面に風景のパネルが廊下・手術室内にあり、患者の緊張を軽減する一助になっています。私が関わった足跡を残したく、阪神タイガースのロゴマークのパネルを希望しましたが却下されました。 東京オリンピックの国立競技場の建設と同様に、大阪医科大学病院新本館建築に関しても、一旦、基本計画が決まりましたが、費用の面で再検討となり、新たな設計会社の下、消費増税前までの1年余の短期間ですべてをやり直し、「バイオフィリア」をコンセプトにした建築が纏まりました。各診療科・部門の主張、患者の利便性、AIの導入、災害対策、新型コロナウイルス感染症対策のために最後の最後に急遽実施設計の変更など、様々な苦労がありますが、やりがいのある仕事です。

私自身は、自宅の建築にも関わった経験はありませんが、貴重な経験をさせていただいています。さらに、私自身は、病院新本館で勤務することはありませんが、自分自身が将来入院する時をイメージし、次世代へ夢のある病院建築、100周年事業への橋渡しの一翼を担えたら、と考えています。


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