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救急医療とニューノーマル[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.35

横堀將司 (日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野教授)

登録日: 2020-12-31

最終更新日: 2020-12-21

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わが国で最初に新型コロナウイルス感染症が確認された2020年1月16日以来、生活は大きく変わってしまいました。待ち望んでいたオリンピック・パラリンピックも延期となり、GDPの減衰もリーマンショックを超えて戦後最悪に。社会の閉塞感が否めない日常となりました。

救急医の日常も大きく変わってしまいました。従来、「三密」は臨床医学、特に救急診療においては重要な要素でした。

私たちは診療現場や災害現場において、強いチームワークで困難な状況を乗り切ってきました。プレホスピタルケア、初期診療、集中治療のどのフェーズでも多職種で連携しつつ、チームプレーで1つの命を救うのが救急医療の醍醐味です。

エキスパートの経験を共有し、治療方針について話し合うには、連日の回診やカンファレンスが重要です。治療の達成のために密接なコミュニケーションを確立する必要もあります。時にはオフタイムの飲み会やレクリエーションなどもチームワーク強化のためには、有効な手段と思っています。

しかし現在は、朝のカンファレンスは少人数でお静かに。回診やラウンドは中止。学生の臨床実習も中止。新人歓迎会や忘年会も中止と、なんとなくチームの繋がりが薄れてしまったような気がして、本当に残念です。
私たちは、パンデミックは克服できるでしょう。しかし、本当の勝者になるには、この辛い経験から学び、革新を生み出す努力が必要です。そして新しい時代に生きる次世代に、この経験から得た成果をレガシーとして残す必要があります。まさに「必要は発明の母」ですね。

そのひとつに働き方改革・教育改革があります。従来、救急医は自己犠牲の精神が美徳とされていましたが、院内感染のリスク分散も考え、極力シフト制にし、必要以上の医師が院内に待機しないようにしました。在宅救命医という新しい概念をも生み出しています。もう『救急医療はブラック企業』なんて言わせません。

また、研修医や医学生向けのvirtual reality教材の開発と応用は、e-learningの未来形を具現化し、今まで以上にリアルな教育を推進することができるようになりました。

感染の拡大を避けるために、身体的距離は離す必要がありますが、私たちの心は離れてはいけません。ICTや遠隔技術を用い「三密は回避し、ココロは密に」。ニューノーマルの中での私の今年の目標です。

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