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大学総診での医学教育 [炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.25

廣澤孝信 (獨協医科大学総合診療科 )

登録日: 2020-12-30

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私は、市中病院での研修と離島の総合病院での経験を経て、現在、大学病院の総合診療科に属しています。1000床を超える病床数の医療機関で、すべての専門科が揃う中での総合診療医としての立ち位置を日々考えています。また、医学生や研修医の先生方に対する卒前卒後の医学教育にも携わらせていただいております。臨床経験のほとんどない医学生に対して、臨床推論をはじめとした現場での考え方をどのように実感を持って学習してもらえるか、日々模索しています。

医学生の皆さんと勉強していると、ついつい検査先行の考え方に偏りがちな傾向も垣間見えてきます。すべての専門科と高価な検査機器が揃っている恵まれた大学病院の環境では、問診と身体診察から鑑別診断をあげて絞り込んでいくプロセス(いわゆる「見立て」)を勉強してもらうことに実感がわかないのではないかと危惧しています。自分の研修した環境は、離島で診療する医師を養成することを目標にしていました。そのため、救急室でX線を超える画像検査を行う際は、「CT・MRI検査を行うことは、離島から緊急搬送したのと同じと考えるように」と熱血指導を受けたことを、今でも昨日のことのように鮮明に覚えています。 昨今のコロナ禍でも、救急車の受け入れ困難な事例が報道されました。離島の病院では、救急搬送先の選択肢がないため、そもそも受け入れ可能かも聞いてこないです。

すべての専門科と高価な検査機器が揃っている、地続きで他にも医療機関の選択肢がある、というのはとても恵まれた環境です。そして、医療の多様性には幅があり、診療する環境によって変化していきます。これらのことをどうしたら実感を持って知ってもらえるか、正解のない問いを日々考えながら今日も医学生や研修医の先生方とベッドサイドに向かっています。

自分のお世話になった指導医の先生たちの胸の内が、最近になってようやくうっすらわかってきた気がします。大学での総合診療やベッドサイドでの医学教育に興味のある方はぜひお待ちしています!

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