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使いやすさを追求したポケットエコーは誤嚥性肺炎の初期判断・経過観察に有用なツールとなる[クリニックアップグレード計画 〈医療機器編〉(24)]

No.5037 (2020年11月07日発行) P.14

登録日: 2020-11-09

最終更新日: 2020-11-09

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近年、病態把握のために超音波検査を活用し診療方針を決めるPOCUS(ポイントオブケア超音波)への注目が高まっている。特に在宅医療では、低侵襲かつ低コスト、ベッドサイドでタイムリーに実施できるポータブルタイプのエコーを用いたPOCUSの有用性は高いとされている。連載第24回は、どこにでも持ち運びできるポータブルタイプのエコーを在宅医療の現場で聴診器のように駆使し、POCUSに加え、患者や家族とのコミュニケーションを深めるツールとして活用している事例を紹介する。

在宅医療の現場では、診断から治療までの一連の流れを迅速かつ的確に行うことが重要になる。こうした観点から、ポータブルタイプのエコーを常に持ち歩き、聴診器を当てるのと同じような感覚でPOCUSを実施しているのが、北海道・十勝いけだ地域医療センターの並木宏文さんだ。並木さんは宮崎大を卒業後、主に僻地・離島医療に従事してきたキャリアを持つ総合診療医で、人間同士のつながりを基軸にした地域医療のシステム構築に取り組んでいる。

 

在宅でのエコー活用 3つのメリット

並木さんは、在宅医療におけるエコーの有用性を3点挙げる。1つ目は、医療者と患者、家族間のコミュニケーションツールとしてのメリットだ。

「在宅医療では、医療者と患者・家族が膝を突き合わせて日常を語りながら医療を提供していきます。エコーを使えば患者さんの『ここが辛いです』という言葉に共感し、手を患部に当てるだけでなく、エコーの画像を見ながら患者さんとの対話をより深めることができます。私の経験では、患者さんはエコーを通じて医療者だけでなく自分の身体とも対話できるようになると感じています」(並木さん)

2つ目は、医療者間の連携強化につながる点。例えば、訪問看護師が患者宅を訪問した際に判断に迷うことは珍しくなく、医師に電話で相談の上、指示を受けるケースもある。エコーの静止画や動画を共有することによって、医療者は現場にいる患者や家族の心情に沿った判断がしやすくなる。

3つ目は、エコー画像の所見で、迅速かつ的確な判断を行うことができる点。腹部エコーによる腹水の体液管理や膀胱バルーンカテーテル交換などの排尿管理に加え、並木さんは気胸や心不全、肺炎の病態把握における有用性から肺エコーを積極的に実施している。

肺エコーで初期判断の精度が格段に向上

肺は従来、空気を含むためエコーに適さないとされてきた。しかしエコーのアーチファクトの解釈により、肺実質の浮腫を推定できるようになったことで、ドライな肺にできるA-lines、水分含有量増加や炎症を伴う肺で認めるB-lines、肺炎や無気肺で認めるconsolidationの有無などの項目で評価する診断法がここ15年で確立された。

並木さんは在宅患者に多い誤嚥性肺炎の初期判断とモニタリングにおいてエコーの実用性は高いと指摘する。

「誤嚥性肺炎は重力によって肺背下部に生じやすく、実際に肺炎が起こっているか判断しにくいことがよくあります。通常はバイタルや聴診などの身体観察を含めた総合的な判断を行い、医療機関へ搬送もしくは自宅で経過観察、となります。エコーを活用することで胸水の発生や無気肺の形成などの検出が可能になり、初期判断の精度が格段に向上します。経過観察の場合でも、胸水減少や無気肺改善などフォローがしやすくなります。『在宅の患者さんの背中にエコーを当てるのは大変』という声もありますが、おむつ交換や褥瘡チェックなど日常的な在宅ケアの流れの中で自然にエコーを当てれば(図1)、訪問スタッフの負担が少ない形で有用な情報を得ることができます」

どの現場・どの医療者でも使えるエコー

並木さんが常に携帯しているのが、日本シグマックスの「ポケットエコーmiruco(ミルコ)」(https://www.sigmax-med.jp/medical/product_miruco)。

mirucoの最大の特徴は、コンベックスプローブが19万8000円、リニアプローブでも29万8000円というリーズナブルな価格。ポケットサイズで携帯性に優れており、合計重量はコンベックスでもわずか450gだ。

 

カラードプラはなく、Bモードのみと在宅医療の現場で必要な機能だけを搭載しているため、操作方法がシンプルで扱いやすい点も特徴。プローブとタブレットの付け外しで、アプリが自動的に起動もしくは終了するため、現場で速やかに利用できる。タブレット画面で部位や深度、体型を選択し、描出したい部分にプローブを当てれば画像の取得が可能だ。

図2は実際にmiruco(リニアプローブ)で撮影した、脳梗塞後遺症により全介助が必要になった要介護5の80代男性患者のエコー画像。の画像は、患者の活気がなく微熱があった時に、ケアの流れで行った左肺のエコー画像で、胸水貯留、無気肺形成、少数のB-lineを認めた。総合的に判断し、自宅で治療を行う方針とした。の画像は治療開始から2週間経った画像。胸水はほぼ消失、無気肺も改善を認め、臨床的にも活気が戻ったという。医療者が日常的にエコーを実施することで、入院や通院をせず在宅のまま症状が改善した事例だ。

 

在宅医療でmirucoを活用するメリットについて並木さんはこう語る。

「mirucoは、開発者が地域の現場からの声を真摯に受け止めた結果として生まれた『どの現場でも、どの医療者でも使えるエコー』です。操作がシンプルなので訪問看護師であってもしっかりと撮影でき、医療者間の連携や迅速・的確な判断が可能になるなど在宅医療の質が向上します。在宅医療の現場は医療者が限界を感じがちな環境ですが、『まだ何かできるのではないか』という気持ちを持ち続け、医療者のサポートとなるツールを使いながら、患者さんと一緒に考え寄り添う医療を提供していきたいと考えています」

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