株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

拘束型心筋症[私の治療]

No.5035 (2020年10月24日発行) P.30

絹川弘一郎 (富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二講座教授)

登録日: 2020-10-27

最終更新日: 2020-10-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 拘束型心筋症は特発性心筋症のうち,心筋の肥大や心室の拡張を伴わないものの,拡張機能障害により心不全症状を呈する。比較的稀な疾患であり,正確な疫学統計に乏しいが,2002年のデータで全国の患者総数が300人という。おそらく若年者に多い。特定の遺伝子変異との関連は知られていないが,家族歴を有する例は少なくなく,遺伝的素因により発症すると考えられる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    心不全症状として,呼吸困難・動悸・易疲労感・胸痛などを生じる。

    【身体所見】

    頸静脈怒張(時にKussmaul徴候)・下腿浮腫・肝腫大・腹水などを認めることがある。奇脈はほとんどない。聴診上,Ⅲ音や収縮期雑音(僧帽弁逆流・三尖弁逆流)などを認めることがある。

    【検査所見】

    心電図は心房細動・上室性期外収縮・低電位差・心房/心室肥大・非特異的ST-T異常・脚ブロックなどを認めることがある。心エコー図では,心拡大の欠如と正常に近い心機能により拡張型心筋症との鑑別,心肥大の欠如により肥大型心筋症との鑑別を行う。心房拡大・心腔内血栓・房室弁口流入波高の呼吸性変動<25%などを認めることがある。心臓カテーテル検査で,冠動脈造影において有意な冠動脈狭窄を認めず,左室造影では正常に近い左室駆出分画を呈する。右心カテーテル検査による左室優位の心室拡張機能障害が,特徴的な所見である(右房圧と肺動脈楔入圧の上昇およびW型波形,左室と右室の拡張末期圧上昇とdip and plateaux波形,肺動脈収縮期圧>50mmHg,左室拡張末期圧>右室拡張末期圧+5mmHg)。心内膜下心筋生検で特異的な所見はないが,心筋間質の線維化,心内膜肥厚などを認めることがある。

    【除外診断】

    鑑別診断するべき疾病は,収縮性心膜炎,虚血性心疾患,高血圧性心疾患,肥大型心筋症,拡張型心筋症,二次性心筋症(心アミロイドーシス,心サルコイドーシス,心ヘモクロマトーシス,グリコーゲン蓄積症,放射線心筋障害,家族性神経筋疾患),心内膜心筋線維症。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    拘束型心筋症の確立された治療はない。利尿薬による症状緩和がメインである。重症例においては心臓移植の適応を検討する。植込み型補助人工心臓の適応となる場合もあるが,一般的ではない。心臓移植待機中に静注強心薬依存となる場合,肺血管抵抗を軽減させるPDE-Ⅲ阻害薬を使用することがある。

    残り1,292文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top