近年、糖尿病性腎臓病(DKD)という概念が提唱され、糖尿病性腎症には含まれない、アルブミン尿陰性の腎機能低下も、2型糖尿病(DM)例の腎合併症として包括的に捉えるようになりつつある。しかしこのDKD、表現型により転帰が大きく異なる可能性が、今回の欧州糖尿病学会(EASD)において、Giuseppe Penno氏(ピサ大学、イタリア)により報告された。
同氏らが解析対象としたのは、自施設で登録した2型DM患者986例である。これらを以下の4群に分け、その後の転帰を比較した。すなわち、「アルブミン尿陰性(<30mg/g)」かつ「腎機能軽度低下以上(eGFR≧60mL/分/1.73m2)」の「非CKD」群(79.0%)と、「腎機能軽度低下以上」ながら「アルブミン尿陽性」の「ステージ1-2 DKD (1-2 DKD)」群(14.6%)、さらに「アルブミン尿陰性」ながら「腎機能中等度低下以上」の「アルブミン尿陰性(-Alb)DKD」群(3.4%)、アルブミン尿を認め、腎機能も中等度以上低下した「アルブミン尿陽性(+Alb)DKD」群(3.0%)─の4群である。
その結果(平均12.9年観察)、「末期腎不全」への移行率が、「非CKD」群(4.38/1000例・年)に比べ有意に高かったのは、「+Alb DKD」群(35.7/1000例・年)だけだった。なお、「-Alb DKD」群における移行率は7.79/1000例・年、「1-2 DKD」群は8.63/1000例・年だった。
一方、重大CVイベントは、「非CKD」群(21.6/1000例・年)に比べ、「+Alb DKD」群(59.4/1000例・年)、「-Alb DKD」群(44.4/1000例・年)、「1-2 DKD」群(38.5/1000例・年)とも、発生率は有意に高くなっていた(平均11.3年観察)。
対照的に「総死亡」(平均12.9年観察)は、「非CKD」群(14.5/1000例・年)に比べ有意に発生率が高くなっていたのは「+Alb DKD」群(71.2/1000例・年)のみだった(「1-2 DKD」群:26.8/1000例・年、「-Alb DKD」群:29.8/1000例・年)。