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■NEWS 【欧州心臓病学会(ESC)】SGLT2阻害薬によるHFrEF例の転帰改善が再び示される:EMPEROR-Reduced試験

登録日: 2020-09-01

最終更新日: 2020-09-01

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昨年の本学会では、ランダム化試験“DAPA-HF”が報告され、収縮障害心不全(HFrEF)例におけるSGLT2阻害薬の「心血管系(CV)死亡・心不全入院」、「総死亡」抑制作用が明らかになった。本年は異なるSGLT2阻害薬を用いたEMPEROR-Reduced試験が報告され、「CV死亡・心不全入院」抑制作用は認められたものの、生存に対する影響はDAPA-HF試験と異なる結果となった。ベイラー大学(米国)のMilton Packer氏が報告した。

EMPEROR-Reduced試験の対象は、「左室駆出率(EF)<30%」、ないしは「EF30%」ながら、「NTpro-BNP高値、または直近1年間に心不全入院既往」を認めた3730例である(学会報告における説明)。2型糖尿病合併の有無は問わない。また全例、標準的心不全治療を受けていた。

EF平均値は27%と、DAPA-HF試験の31%よりも低く、平均糸球体濾過率も62%で、DAPA-HF試験の66%よりも低値だった。さらに、DAPA-HFでは10.5%でしか用いられていなかったARB・ネプリライシン阻害薬(ARNi)を19.5%が服用していた。

これら3730例はSGLT2阻害薬エンパグリフロジン10mg/日群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で観察された。

中央値16カ月の観察期間中、1次評価項目である「CV死亡・心不全入院(初回)」はSGLT2阻害薬群で、プラセボ群に比べ、相対的に25%の有意なリスク減少が認められた(ハザード比[HR]:0.7595%信頼区間[CI]:0.650.86)。また糖尿病合併の有無、心不全重症度、ARNi服用の有無など、事前設定された亜集団のいずれにおいても、SGLT2阻害薬による抑制作用が認められた。

なおプラセボ群における1次評価項目発生率は21.0/100例・年であり、DAPA-HF試験プラセボ群の15.6/100例・年に比べ著明に高かった。

さて、1次評価項目減少の内訳を見ると、有意減少が認められたのは「心不全入院」(HR0.6995%CI0.590.81)のみであり、CV死亡には有意差はなかった(HR0.920.751.12)。この点は、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンによるCV死亡の有意減少が認められた、DAPA-HF試験と異なる(HR0.820.690.98)。また総死亡も、DAPA-HF試験では、SGLT2阻害薬群における有意減少が観察されたが(HR0.830.710.97)、本試験では認められなかった(HR0.920.771.10)。

この点についてPacker氏は、CV高リスク2型糖尿病を対象としたランダム化試験、“DECLARE-TIMI58”と“EMPA-REG OUTCOME”では逆の結果になっていたと指摘(エンパグリフロジンはCV死亡を有意に抑制[HR0.620.490.77]も、ダパグリフロジンでは有意減少を認めず[HR0.980.821.17]。総死亡も同様)。試験間で単純比較するのは勧められないとコメントしていた。

本試験はBoehringer IngelheimEli Lilly and Companyから資金提供を受け行われた。また報告と同時にNEJM誌にオンライン掲載された。

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