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所変わっても[プラタナス]

No.5015 (2020年06月06日発行) P.3

早坂信哉 (東京都市大学人間科学部教授)

登録日: 2020-06-06

最終更新日: 2020-06-03

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  • 私は現在、都内の大学で公衆衛生を教えている。だが、自治医大卒ということもあり、原点は「地域医療」との思いで数年前から再び訪問診療にも携わるようになった。以前の勤務先の宮城では山奥の診療所で地域医療にどっぷりつかっていたので、訪問診療そのものに不安があったわけではないが、はたしてへき地の経験が、たくさんの専門医がひしめく大都会東京での訪問診療で通用するのか不安はあった。

    最初に担当したのは80歳代後半の女性であった。マンションの上層階に家族と住む彼女は不安定狭心症のため遠くには外出ができず、訪問診療を依頼されていた。都心で洋服の仕立屋を自ら長らく営んでおり、自分の意見はキッパリと言うタイプであった。診療に行くといつも、昔自分で縫ったよそ行きのドレスを着て化粧をし、背筋を伸ばしてソファーで私を待ち構えていた。

    これまでにも何人もの医師が訪問診療にあたっていたが、本人の機嫌を損ねると、もうあの医師は来なくていい、と本人からクレームが入り、その都度担当医師が変わっていた。クリニックの医師も一巡してしまい、もう代わりがいない、という時に私に担当が回ってきた。医師をどんどん変えるとは、へき地ではできない贅沢である。

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