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ヒス束ペーシングの今後の展望,利点・欠点は?

No.5012 (2020年05月16日発行) P.50

中井俊子 (日本大学医学部内科学系循環器内科学分野診療教授)

藤生克仁 (東京大学医学部附属病院循環器内科特任准教授)

登録日: 2020-05-14

最終更新日: 2020-05-12

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  • 近年,ヒス束ペーシングの有用性が発表され,注目を集めていますが,今後,このヒス束ペーシングが心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)に代わっていくものとなるのでしょうか?
    ヒス束ペーシングの今後の展望,利点・欠点などについて,東京大学・藤生克仁先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    中井俊子 日本大学医学部内科学系循環器内科学分野 診療教授


    【回答】

    【ヒス束ペーシングは現在,CRTの代替にはならないが将来的には期待できる】

    ヒス束ペーシングは,心房から心室への唯一の伝導路の一部であるヒス束を直接ペーシングすることで,生来使用してきた心室への伝導路をそのまま利用し,両心室の元来の動きを再現することが可能です。さらに,完全左脚ブロックを有している患者において,ヒス束ペーシングがその完全左脚ブロックを修正し,左脚ブロック以前の正常な心室内伝導パターンを回復できる場合が少なからず存在します。

    この現象は,右脚,左脚にそれぞれ向かう伝導路は,よく教科書の模式図で見るような心室内でわかれるのではなく,既にヒス束の部位で,その行先が決定しており,完全左脚ブロックがヒス束付近で生じている症例があるということに由来します。このことから,ヒス束ペーシングは,CRTよりも優れているのではないかという議論があります。確かにヒス束ペーシングがうまくいった場合には,CRTを上回る結果を得られる可能性が理論的には高いと思います。

    実際に,CRTで効果が不十分であった症例をヒス束ペーシングに変更したところ,心不全入院の減少に著効を示した報告があり,また自験例でも多数経験します。

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