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ステレオタイプな動きは本能か?[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(291)]

No.5001 (2020年02月29日発行) P.63

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-02-26

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3歳半になった孫の聡、一昨年のクリスマスでは、プレゼントを見た時に小躍りした。比喩的な意味ではない。「わ~い、わ~い」と言いながら、あぁこりゃこりゃという感じで手振りをしながら踊ったのである。
小躍りという言葉は知っているし、使うこともある。しかし、実際に見たのは初めてだった。動画を撮らなかったので、昨年のクリスマスには、起きてくる前からスタンバイ。なのに、小躍りしなかった。残念!
見たことないが、たとえ大人が小躍りしたとしても、小躍りという言葉や概念を知っているがための可能性が高い。聡が小躍りしたのは2歳半の時だから、それはない。

テレビで見て知っていたのかもしれない。しかしそれより、感情によって引き起こされるこのようなステレオタイプな動きというのは、本能に刻み込まれたものであって、経験を積むにつれてすり減ってしまうものなのではないかという仮説を立てている。

もうひとつ、本能的な動きと思われる例をあげよう。某食品メーカーの社長・山本さん(仮名)と飲んでいた時、高校の同級生・岡田君(仮名)がその会社に勤めていることを思い出した。「あぁ、その岡田やったら工場長ですわ、電話してみます」と、山本社長。

自宅に「こんばんは、山本です」と電話。遅い時間だったので、岡田君はとっても邪険に「どちらの山本さん」と応えたらしい。それに対して、誠に申し訳なさそうに「夜分遅くに恐れ入ります。某というつまらない会社の社長の山本なんですが…」

風呂上がり、ソファに座って気持ち良くビールを飲んでいた岡田君、ジャックナイフみたいにピョンと跳び上がって立ちあがったそうな。横で見ていたお嬢ちゃんが、人間ってびっくりしたらホンマにマンガみたいに跳び上がるんや、と、喜んだとか。

しばらくたって同窓会があった。岡田君に「お前は昔から人を陥れて喜ぶようなところがあったけど、大人になってあれはないやろう」と怒られた。おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。「今回の件で悪いのは、どう考えても山本社長であって、俺とちゃうやんけ」と反論するも、聞く耳持たずでありました。まぁ、しゃぁないか。

もう1回、同じように岡田君を驚かせてどんな動きをするかどうかを調べ、仮説を検証してみたい。けど、ホンマにやったら友情はそこで絶たれてしまうやろうなぁ。

なかののつぶやき
「知り合いの武道家に聞いた話。むっちゃ強い拳法の遣い手がいて、本気を出すと相手が数メートル吹っ飛ぶ。ほとんどの人はそんな飛ばされ方の経験がない。さて、どんな動きをするか。なんと、多くは空中で、あ~れ~という感じで手を大きくグルグルと回して、足をバタバタさせるらしい。時々、マンガで見るやつです。伝聞なので保証はありませんけど、きっとホンマに違いないと思っとります」

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