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高血圧の自己管理[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.5

猿田享男 (慶應義塾大学名誉教授)

登録日: 2020-01-01

最終更新日: 2019-12-26

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高血圧は今なお日本の生活習慣病の中で最も多く、その有病者数は4700万人と推察されている。高血圧は脳卒中、心筋梗塞および心不全等の重要な危険因子であり、早期に発見し、24時間にわたって血圧を正常範囲にコントロールすることが大切である。

高血圧のように患者数が多く、その検査法や治療法が多岐にわたる疾患では、検査法や治療法をできるだけ統一するのがよく、そのために欧米でも日本でも高血圧治療ガイドラインが作成されている。

日本では2000年に最初のガイドラインが出版され、国民教育に努めてきた。その結果、高血圧の発症・増悪に最も重要な食塩摂取量が国民平均約10g/日となり、重篤な高血圧患者は減り、これまで日本人の死因の3位であった脳卒中は肺炎による死亡数より少なく、4位になっている。

近年、降圧効果が優れ、副作用の少ない降圧薬が多数開発され、高血圧治療は容易になったが、現在高血圧管理で注目されているのは、日常の医療現場で血圧管理の指標とする血圧には、病院や診療所で医師が測定する血圧がよいのか、診察室外に置かれた自動血圧測定装置による血圧がよいのか、日本を含め世界で広く用いられるようになった家庭血圧計による血圧がよいのか、である。

日本では比較的に早くから家庭血圧計が普及し、診療ガイドラインに測定方法、測定条件や測定時間等が詳細に記載されており、診察室血圧値よりも家庭血圧値に重点を置いている。日本ばかりでなく欧米のガイドラインで特に高く評価されているのが、しっかりと教育されて測定されている家庭血圧値である。

なお、以上の血圧測定のほか、24時間の血圧変動を詳細に測定できる自由行動下血圧測定法(ABPM)は、白衣高血圧や仮面高血圧(逆白衣高血圧)の診断に有用な特殊検査である。

現在、日本の多くの病院や診療所では、診察室外に設置された自動血圧測定装置で血圧を測定している方が多いが、病院や診療所および血圧測定装置に慣れてくると、安定した血圧値が得られてくる。それゆえに、これからの医療現場での血圧管理は、家庭血圧を主とし、病院や診療所での診察外測定装置での血圧を参考とし、医師による測定は、患者の状態をみて決めるのがよいと思われる。

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