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生態系と食[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.69

上瀬英彦 (上瀬クリニック院長)

登録日: 2020-01-05

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昨今、記録的な豪雨、非常に大型の台風襲来、局地的な竜巻の発生などのフレーズに慣れっこになってきた。昨年の夏も異常に暑く、昔ながらの日本の四季は崩壊しつつある。地球温暖化や異常気象は、日本だけでなく世界的な現象になっている。昨年の9月23日、ニューヨークで開催された国連気候行動サミットでのスウェーデンの16歳のグレタ・トゥーンベリさんの演説は、世界中の大人に衝撃を与えた。田舎で開業して38年目を迎える72歳の小生も衝撃を受けた一人である。

日常の診療の場でも地球温暖化の話題が出るが危機感を強く口にするのは、多くは高齢者である。昔の気候を体感しているからだろうか?しかし、体温を超える日が続き、熱中症の危険の中で生活し、テレビで北極や南極の氷が解け続ける映像をみせられ、アマゾンの火災がニュースになり、地球各地の砂漠化の実態を知ると、誰もが将来への不安感を抱くのは不思議ではない。環境や生態系の悪化は、最終的には食環境の悪化につながる。世界には飢えている人々が大勢いる一方、平気で膨大な量の食品ロスの大罪を犯している日本。食の祟りは想定外の事態を引き起こすことを忘れてはなるまい。

最近、世界の若者たちの間で脱ミートのうねりが起きていると言われる。それは地球温暖化への危機感からである。温暖化の原因はCO2だけでなく家畜の飼育もその一因とされ、家畜のゲップのメタンガスの温室効果はCO2の25倍とされる。世界の肉離れの流れは、地球温暖化への危機感であれ、動物愛護であれ、健康志向であれ、今後ますます拡大する予感がする。その兆しは、豆などの植物性蛋白質でつくられたプラントベースドミートと言われる植物肉の話題である。世界の大手食品企業も関心を示し、確実にその市場は拡大の様相をみせているという。

今年の日本の夏はオリンピックでさらにヒートアップしそうだが、生態系保護のため、クールに日本の若者の食への関心と食行動の変容に期待したい。

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