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医学生の臨床能力試験(臨床実習後OSCE)の導入に向けて[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.30

齋藤宣彦 (医療系大学間共用試験実施評価機構副理事長)

登録日: 2020-01-02

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医学生の臨床実習が、学生が診療チームの一員として限られた範囲で診療に参加するClinical Clerkshipになって十有余年を経た。もちろん、未だ医師ではない学生が医行為を行うには、厳しい2つの試験に合格することが許容条件である。それが知識の修得度を問う Computer Based Testing(CBT、コンピュータ画面上で出題される試験)と、技能や態度を評価するObjective Structured Clinical Examination(OSCE、ここでは模擬患者への面接やシミュレータを用いた診察技法試験)である。この臨床実習前のCBTとOSCEは、全医学部が会員となっている医療系大学間共用試験実施評価機構(以下、共用試験機構)により順調に実施されている。

となると、次は各医学生が、医学部を卒業させてよいレベル、すなわち、臨床研修を開始できる臨床能力を修得しているかを評価することで、これこそ医師養成機関である医学部としての社会に対する責務である。

そこで共用試験機構では、全国の医学部6年生を対象に、日常遭遇しうる事案を課題としたOSCEを、2020年度から実施することを企画した。このOSCEでは、たとえば、「階段を上ると胸が締め付けられる」ことを主訴に受診した患者さん(模擬患者)に、病歴を確認した後に身体診察を行い、考えられる病態を想定して、鑑別診断を挙げ、診断のための検査や治療計画を指導医に報告しなさい、という課題が与えられる。いわば日常診療の一コマで、課題に応じ、場面はERであったり、病棟であったりする。このような課題を1人の学生が3課題受験し、この様子を、実施大学教員のみならず、他大学の教員や研修病院の指導医が、その大学に赴いて評価する、というものである。

しかし、大学の財政状況は逼迫し、試験の運営のための人員も足りない。その中にあっても各医学部では、臨床実習後OSCE実施に向けて、涙ぐましい努力を続けていることを、広く、医療界の皆様には知って頂きたいのである。

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